Steelhead Rainbow Trout
8月のお盆は群馬県へと長期での釣り旅に行った。以前行ってとても良かった野反湖を含めたいくつかの釣り場に行き、その帰りに軽井沢を少し観光して、温泉に入ったりしながらのんびりと過ごす予定を立てた。
無印良品のキャンプ場の近くにはバラギ湖という湖があり、そこでは大型のトラウトを釣ることができるということで二日間ほど通いこんだ。行ってみると、すべての釣り料金が夏季は半額になっていた。それはこの湖が夏場は相当にタフな釣りになることが明白だったためだった。管理人のおじさんに「だいぶ釣りにくいと思うけど、いいかい?」と何度も念押しされたけれど、来てしまったものはやるしかないということで釣りを始めた。この湖は全体的に浅く、水深はおそらく1mくらいのところがほとんどなのではないだろうか?ルアーを投げ込むもすぐに着底するので、丁寧にスプーンをカウントダウンしながら広く釣り場を探っていく。スプーンの大きさや色、重さを段々と軽くしていきつつ、アクションを付けてみたりするが一向にあたりすらない。周りのフライマンやボート釣りをしている人でさえ一匹もかけているところを見ていないので、暑い時期の水深のない湖は相当厳しいのではないかと思った。時折大きなニジマスがライズをするので、虫っぽいルアーをキャストしてみるも反応はゼロだった。こんな日が二日間ほど続いた。湖では時折とても晴れたり、強い雨が降ったりと天候はまちまちだったが、誰もいない湖の美しさはやはり格別で、釣れない時間でさえイライラするようなことは一つもなく、どうしたらつれるのだろうと考えながらルアーをキャストし続けていたら1日にが終わっているようなことが大半だった。
その後、上田の街で温泉に入ったり買い物をしたりしながらのんびりと過ごしたあとに満を持して今年二回目の野反湖へと向かった。大雨が予想されたのでバンガロー泊にしたがこれが正解で、初日ついた時点で雨はなかなかに強かった。雨具とウェーダーを着込んで釣り場へと向かい、ニシブタワンドの深場へスプーンをキャストした一投目、いきなり強いアタリがあった。残念ながらかからなかったものの、二度目も同じ場所へルアーを放り込み、ボトムをトレースするようにふわふわとさせていたらようやく魚が掛かった。魚は深場で掛かったので正体はすぐには見えなかったが、強い引きに糸が出され、それを巻きとり岸に寄せるというやり取りを数分したあとにようやくネットに収めることができた。釣れたのは群馬県名産のハコスチという品種で、大きさは50cm弱はあったと思う。それをスカリに入れてキープしつつ、釣りを再開したが雨がかなり強くなってしまい続行が難しいと判断したので、この日はこの一匹を釣り上げて終わった。もう少し小さければ串に刺して塩焼きにするはずだったのだけれど、大きすぎたので切り身にしてパスタやソテーにして食べた。もちろん味はとても良く、淡白だが身が程よく柔らかくて美味しかった。イワナやヤマメは白身だが、このニジマスに関しては身はピンクでサーモンのようだった。
このあと二日間ほど野反湖で釣りをしたものの、ヒットはおろかアタリすらも一度もなかった。いつもいくニシブタワンド周辺だけでなく対岸や遠くの淵のほうまで出るも全く魚影すらない。多くの人に聞いて回ったが、この数日で魚の活性が良かったのは到着した日だけで、ルアーの人は殆ど魚を釣り上げていないということだった。ただし、人が少ないと野反湖の美しさはより引き立てられるようで、湖のそばで食べたお昼ごはん、そしてそこで過ごす時間はとてもかけがえのないもののように感じた。
旅の終わりに、『火山のふもとで』に出てくるアントニン・レーモンドの『夏の家』や、その周辺のタリアセンなどを見て回った。有島武郎の『浄月庵』は今は『一房の葡萄』という名前のカフェになっているのだけれど、そこで飲んだコーヒーは冷えた体を温めてくれた(夏なのに寒い)。木造の広いテラス席はとても気持ちが良かった。個人的に一番良かったのは堀辰雄の別荘だった。かなり小さな別荘だったけれど、そこで暮らす人間の息遣いがわかるかのような手触り感があった。玄関がが一段高く小上がりになっており、それが広いウッドデッキにつながっている。日本の建材と建築様式でアメリカの住居を再現したかのような小屋なのだが、妙に落ち着く。家の狭さに対して窓やウッドデッキの広さがとてもあるせいかあまり狭さを感じなかった。将来家を作るなら絶対にウッドデッキは作ろうと思った。
今年もトラウトフィッシングができるのはあと1-2ヶ月しかないので、釣りにかこつけていろいろなところに出向いていきたい。