ESSAYS IN IDLENESS

 

 

A Lake with Silence

Youtubeを見て知ったのだけれど、日本のどこかの湖で背の青いニジマス、通称ブルーバックレインボーが釣れるということを知り今年のうちに必ず行きたいと思っていた場所があった。それは天空の湖と呼ばれる群馬県のダム湖である野反湖。東京からは片道四時間ほどかかるので、決してアクセスがいいとは言えないが色々と調べて見る限りは最高の場所っぽさそうだったので、日々のストレスを晴らすという意味でも行かねばなるまいと思い二泊三日で釣行に出た。

野反湖キャンプ場に車を停めて、そこからリアカーに荷物を積んでキャンプサイトまで出かける。キャンプ場はとても設備が整い、手入れが行き届いた素晴らしい場所だった。僕ら以外におそらく宿泊客は数組しかいなかったと思う。広々としたサイトや炊事場を自由に使うことができて快適だった。サイトからはもちろんのことながら美しい湖が見渡せて、歩いて釣り場までアクセスができることもとても良かった。

初日は雨。雨具を着込んで湖の縁まで降り、さっそくキャストを開始する。周りには数人ばかり釣り人がいたが、エサ釣り、フライ、ルアーと様々なやり方で魚を狙っていた。みんな一心不乱に静かな湖を見つめながらキャストを繰り返している。雨音とキャストの「ヒュン!」という音しかしなかった。僕らは結局この日は釣ることはできなかったが、エサ釣りの人たちは何匹か大きなニジマスを釣っていて羨ましかった。

次の日は晴れ、釣る場所も少し深場に変えて一日中ルアーを投げ倒した。僕は岸ギリギリまで引き上げた大きなニジマスを寸前のところでばらしてしまいキャッチならず。ニジマスを食べるためにアクアパッツァの準備をしてきたというのにミニトマトが無駄になってしまった。透き通った水の中にはゆうゆうと泳ぐニジマスの姿が時たま見えるが、ルアーには食いついてこない。広くて静かな湖に膝下が浸かるほどまで入っていき、無心でルアーを投げていると時間の経過を忘れてしまう。日差しは初夏らしい強さだった。日が落ちるギリギリまで粘ったけれどあたりはその後一度もなく、悔しさと清々しさが同居したような微妙な気持ちになった。晩飯の支度をしていると湖に夕焼けのオレンジ色が写ってとてもきれいだった。

結局最終日の朝も釣れず野反湖をあとにした。今後数年、この湖には通い詰めて必ず大きなニジマスを釣って見たいものだ。家に変えると、手や顔が日焼けで真っ赤になっていた。