ESSAYS IN IDLENESS

 

 

Trout Fishing in Psycho

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山梨県で一番有名な湖といえば河口湖だろうが、その脇に「西湖」という小さな湖がある。これまで西湖を「にしこ」だと思っていたけれど、ただしくは「さいこ」と読むらしい。30も過ぎてこんな事も知らないとは、、と一人で恥ずかしい気持ちになるがきれいな景色を見れれば読み方なんて何だって良い。

この日の目的は解禁されているヒメマスを釣ることだった。ヒメマスは湖に生息するトラウトで、非常に美味らしい。運が良ければ岸からルアーを投げても釣れることがあるらしいが、水深のある西湖ではエサ釣りやサビキ釣りで釣るのがメジャーらしい。美しい湖に向かって竿を振ったり船で浮かんでいるだけでもまぁ満足だろう、どうせボウズなんだろうなと思っていた。

昼過ぎにキャンプ場について、湖の直ぐ側に簡易な登山用のテントをたてる。テーブルと椅子を出して一服してから周囲を見て回った。偶然、遅めの昼ごはんを食べた店の親父がプロの釣り師の方で、その方からヒメマスの釣りかたを教えてもらった。ついでに絶対釣れるといういわくつきの高そうなスプーンを2個ほど譲ってくれた。※翌朝そのうちの一つは湖の彼方に飛んでいってしまった

店から戻って、明日の釣りの準備と、晩御飯の準備をした。晩飯は米をキャンベルスープで煮たお手軽リゾット。チーズを入れて食べるととても美味しかった。5時前にはもう日は暮れてきていて、富士山の麓のところから真っ赤で大きな満月が見えた。この日はブルームーンだったらしい。いつだったか、朝霧JAMでふもとっぱらキャンプ場に泊まったときに同じように赤い月を見たことがあった。高級卵の黄身のような赤みを帯びた月が、麓のところから出てきたときに本当に富士山が噴火したんじゃないか、あの赤いものはマグマ何じゃないかっていい年の大人がガチでパニクってたのは今思い出しても笑える話。

夜はかなり寒くて、近くの温泉で体を温めた勢いでそのまま寝ようと寝袋に潜り込んだ。最初は大丈夫だと思ったが、足がキンキンに凍りつきすぎて二回程夜中に目が覚めた。流石に夏用寝袋は舐め腐りすぎただろうか。次からは11月移行は厚手の寝袋を持ってこようと思う。朝四時、となりのテントのソロキャンパーのいびきをアラーム代わりにして目を覚ました。テントの中も、テーブルも温度差で結露し濡れていた。外に出るとめちゃくちゃ寒くて体がこわばる。真冬に海で夜釣りとか、ウェーディングでシーバス釣りしている人がいるけれど、彼らはなにか寒さに耐える修練でも積んでいるのだろうか?常人の耐えられる温度ではないが、、、こんな中で釣りできるのかよ、という気持ちになった。ガスストーブでテントの中を温めながら、持ってきたインスタントスープを朝ごはん代わりにする。一瞬胃が温まるけれど、それだけではこの寒さからは逃げられなかった。

しかし、この季節の早朝の湖の美しさたるや、昨日の夕暮れに勝るとも劣らない。霧が湖面から雲のように立ち上って流れていく。水面は鏡のように空を映し出す。音のない幻想的な風景の中、ちまちまとルアーを投げているだけでとても気持ちが良かった。朝の六時半にボート屋にいき、手こぎボートでヒメマスを狙う。手こぎボートを漕ぐのが難しすぎてだいぶ体力を消耗したが、のんびり湖に漂っていると疲れも抜けてくる。朝にあれだけ寒かったのに、太陽が出ると暖かくなる。太陽の光が反射して顔はだいぶ日焼けしてしまった。肝心のヒメマスはというと、一度もあたりがないまま終わってしまった。どこに魚が居たのだろうか、と思うくらいだった。僕らは買ったサビキ仕掛けを根がかりで失い、そのまま釣りは終わってしまった。

ただ、この西湖での釣りは毎年続けていきたいと思うものだった。できれば長い間湖にとどまって、仲間たちとキャンプしながらゆったりとした時間を過ごしたい。たまに釣りでもして、きれいな景色を見ながら魚が食べれたらきっと最高だろう。

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