ESSAYS IN IDLENESS

 

 

LOS ASNGELES 20191121

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腹の痛さと歯の痛さで朝6時くらいに目が覚めた。この旅で初めて早起きをした気がする。外に出ると景色がとても綺麗だった。空室のモーテルの部屋に差し込む光がベッドのリネンや壁を黄金色に染める。それははっと目が覚めるような美しさだった。カメラをぶら下げながらモーテルの近くをうろつき、この瞬間を記録すまいと何度もシャッターを切った。実はこのとき見た景色が今までで一番綺麗だったのかもしれないとこのときに思った。自分が記録すべき瞬間というのはそこに出くわした瞬間にはっきりと分かる。景色や、瞬間への執着とでも言えるこの感覚を味わったのはこの一年で初めてだった。

朝食を食べたモーテルの向かいにあるTwo Gunsというカフェはとても賑わっていて、簡単に言うとおしゃれだった。決して広くない店内だが長い列ができていて注文するのも一苦労。頼んだコーヒーはこの旅で初めての「しっかりとしたラテ」だったし、頼んだサンドイッチもとても美味しかった。もう仕事が始まっている時間なのに、ビジネスマンらしき人たちもテラスに座って談笑をしていた。ここは近くの人達に愛される場所だとということは容易に想像がついた。

特に予定もなかったので街へ繰り出し映画を見た。A24の新作『Waves』がやばい、とにかくサントラがフランク・オーシャンだから映画館で見る価値があるという浅倉の意見は間違いがなかった。結果的に言えば『Waves』は2019年で一番「やられた」映画になるだろう。鑑賞後、かなりアテられてしまってしばし呆然としてしまった。不思議なことに、これまで見てきたどの映画とも違うけれど、自分との共通項を見出すことができる。映画の中に描かれる人たちとは肌の色も国も生き方も歩んでいる道も、日本では馴染みのないオピオイド中毒を起点に物語が進行していくが、それにも馴染みがない。どれも違っているのだけれど自分とのつながりを感じる。唯一わかるのは部活でコーチが集団催眠ばりに激を飛ばすシーンだけだ。この映画がなんなんだと言われれば言葉に詰まってしまう。きっと人生の良い悪いも寄せては返す波なのだろう、というめちゃくちゃざっくりとした解釈を僕はしているけれど、もちろんそれだけでは到底語り得ない。とにかく、何も考えずに見ても素晴らしい映画だと思う。映画館でフランク・オーシャンが聞けるのは今の所この映画だけだし、あとは個人的には百年ぶりくらいにアニマル・コレクティヴを聞いて、素晴らしい回想シーンで『Roche Ravens』が流れた瞬間に涙が溢れ出てきてしまったのも大きいかもしれない。

居ても立っても居られず、またベニスビーチへと向かってしまう。潮風を浴びながら夕焼けのなかで滑走するスケーターを眺める。帰りしなモールのフードコートで夜飯を食べてからモーテルへと戻った。明日、2年ぶりにポートランドへ行く。そのためにパッキングをしなければいけないのだけれど、さすがに荷物が増えすぎていた。緻密にバッグの中身を調整したり、布団圧縮袋に衣類を詰めたりと微妙に頭を使うのもだいぶとだるい。

1週間、やることがなくなるくらいLAにいたわけだけれど、今回の滞在はLAの新たな一面を発見できる素晴らしい時間になった。もう少し僕の体調が良ければ毎晩体力が尽き果てるまで遊べたのになぁという後悔もあるが、とりあえずLAは郊外こそ至高だと思う。

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