ESSAYS IN IDLENESS

 

 

PORTLAND 20191129

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ポートランド、そしてアメリカ旅行の最終日。やはり始まりはなんと行ってもカオマンガイ。この旅で4,5回目になるような気がするが美味しいものは何度食べたっていい。健康にも、そしてバカ盛りじゃないというところに優しさを感じる。天気が良かったので外の席で日差しを浴びながら食べた最後のカオマンガイはやはり最高に美味しい。温かいお茶とスープが体に染み渡っていくと疲れも取れる。

この日は荷物の持ち運びのことも何も考えなくて良いので、思い切り買い物を楽しむだけだ。まず、ミリタリーストアのアンディ&バックスへ。日本の古着屋がこぞって売り出している蛍光パネルの付いたジャケットや、ECWCSの製品もここならより安く買える(なので、日本では実は買わないほうがいいし、eBayで買ったほうがより安い)。メリノウールの靴下や、やたらと明るいポータブルのライトなど実用性のあるものをいくつか破格の値段で買い、満足して次へ。僕がアラスカ旅行に行くときにはお世話になったネクストアドベンチャーというアウトドア用品屋へ。入り口で綺麗でヒップなお姉さんに「あなたおしゃれやん!」と声を掛けられるだけでこの店で散財しようという気持ちになる。品揃えが良いだけでなく、ラインナップもかなり面白いし、セールが至るところでやっていて見ていて楽しい。僕の目当ては地下のセカンドハンズゾーンで、ここで叩き売られている良い品を掘り出すのがたまらない。グラミチのパンツが一本$5、当然摩耗しているがそもそも耐久性のある品なので余裕で履ける。他にもスーツケースに余裕があれば持っていきたい品が沢山あるが、ある程度厳選してレジへと持ち込む。次に、ビーコンサウンドで可愛いカセットテープケースを買う。手元がいっぱいになるので溜まった荷物をホテルに置きにいく。第一回戦はこれで終わり。そこから一息ついてホーソーンへと向かう。おそらく、僕が最も頻繁に訪れた場所がホーソーンストリートだ。ここにはたくさんの古着屋、レコード屋があるし、バグダットシアターやパウエルブックスの支店もある。一日まるっとやることがないときにこの通りの端から端までゆっくり歩けば一日が終わっている。手始めに、ポートランドで最も大きいスリフトストアのハウスオブビンテージに向かい買い物を始める。日本では見れないような面白い品々が所狭しと並んでいるから見るのには時間がかかるのだけれどここで時間をつぶすのはとても楽しい。変な柄のニットやTシャツ、NIKEのよくわからないモデルのスニーカーをを手に入れることができた。いつか、なんの制限も持たずにこの店で20万円分くらい散財したいと思う。

最後に、コモングラウンドという馴染みのカフェで一息つくことにした。ここは変に肩肘の張っていないローカルなカフェで、僕の一番のお気に入りの場所でもある。外に喫煙スペースもあるし、ケーキはうまいし、いつもUSインディーのプレイリストが掛かっている。家具はクタクタに汚れていて、電源タップがたくさんあって、Wi-Fiは早くて使いやすい。店員も気さくで接客が気持ちがいい。チェスをしている人やクロスワードパズルに勤しむおじさん、音楽を聞きながらレポートをかいている学生など、みんなバラバラのことをしていてお互いに完全に無関心だ。この程度の良い無関心というのが本当に心地が良い。僕らの隣の女の子はなんの恥ずかしげもなくインスタライブをやっているところだったし、周りのひとはそんなの気にも掛けない。こうした光景を眺めて、昔と同じようにコーヒーを啜っているとポートランドは改めていい街だなと思う。みんなポートランドは変わってしまったと言うけれど、まだまだ大切な芯の部分は変わっていないはずだ。

ホテルへと戻り、この旅最後のディナーへ。最後に肉でも食うかということでダグ・ファーへ行っておすすめの印が付いた高いリブロースを食べた。アメリカのステーキはたいていまずい、というイメージがあるがこのステーキはとても柔らかくソースも凝った作りになっていてとても美味しかった。更に調子に乗ってダグフライという名前の看板メニューらしき芋を食べたのだけれど、量がめちゃくちゃ多くて結果的には食いきれなかった。いくら可愛い店員のお姉さんが笑顔で持ってきてくれたとしても、僕らに摂取できるカロリーの限界を遥かに越えていた。食い切る努力はした。このステーキを食べながら、旅の最後のこのホテルとレストランを持ってきたという自分たちの判断が正しかったと確信した。終わりよければ全て良し、とはよく行ったもので旅の締めくくりを最高の場所で迎えることは大切なことだと思う。仮にそれが少し高かったとしても、そのほうがずっと幸せになれる。

翌朝、早朝にタクシーを呼んで空港へと向かった。ガタイのいいおじいさんがドライバーで、よく話しかけてきてくれた。「この道路からはマウントフッドが見えるし、今日は天気も良いからワシントン州のマウントセイントヘレンも見えそうだぞ!」そう言われて正面を向くと、朝日に染まって黄金色に輝くマウントフッドが見えて普通に感動してしまった。この人にならチップを100%払ったって良いと思えた瞬間だった。

帰りの飛行機は行きに比べてガラガラで、一人で3席分のシートを専有できた。僕らはこれを「貧民のファーストクラス」と呼び、足を伸ばして体を横に倒すことができる優雅な空の旅を満喫した。色々映画を見たいと思ったけれど、すぐに寝てしまったようだ。心配していたエコノミークラスの症状も出なかったし、歯が痛むようなこともなかった。目が覚めるといつの間にか東京上空で、着陸まであと1時間くらいになっていた。やることもないのでアメリカ版サスケこと『ニンジャウォーリアーズ』を見ていた。成田空港での入国審査はすぐに終わり、ゲートからバスターミナルへと移動する。久しぶりに見た東京の空は相変わらず狭いし色はなんとなく濁っているような気がする。帰りのリムジンバスの車窓から、夕焼けに染まるビル街を首都高から眺めていると、東京も悪くないかもしれないとほんの少しだけ思った。

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