ESSAYS IN IDLENESS

 

 

PORTLAND 20191128

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残すところこの旅も今日を含めあと2日で終わりを迎える。あっという間にすぎたと感じる一方で、長く居すぎたような気もする。この日の始まりは、まず宿を変えるためにタクシーに荷物を積み込んで次の宿へと向かう。最初に泊まったイーストサイドロッジの正面にあるジュピターホテルというヒップ感ゴリゴリのモーテルだ。隣にはライブハウス「Doug Fir」があり、ホテルのロビーには地元の写真家の作品が額装して置いてある(買える)。今回とったこのホテルの部屋がこれまでで一番広く、旅の疲れを癒やすことができそうだと思った。案内された部屋の壁にはなぜか黄金に輝く大仏の顔がでかでかと塗装されているし、部屋のアメニティにはコンドームが、、、ヒップになる方向を間違えていると思うのだが細かいことは気にしていられない。取り急ぎ昼飯代わりにいつものようにシズルパイでピザを。今回が最後になるかもしれないから、店のマーチャンダイジングをいくつか合わせて買った。

ちょうどこの日はサンクスギビングで、街ではほぼ人を見かけなかった。行こうと思っていたスリフトストアも軒並み閉まっていてやることもなかったのでロイドセンターに行ってみたけれど、まさかの休み。あれだけ広い駐車場に車が一台も停まっていなくて、一人のスケーターがトリックの練習をしているところだった。浅倉に僕がよくタバコを吸いに来ていたロイドセンターの屋上の喫煙所を案内した。そこには本当に車が一台も停まっていなくて、だだっ広いコンクリートの地面の灰色と空の青色しかなかった。なんの音もせず、ただ風が心地よく吹いていた。とても気持ちが良かった。その時、このサンクスギビングの雰囲気は日本で言うところの正月の雰囲気に似ているとふと感じた。

郊外のほうは何もやっていないということでダウンタウンへと向かった。パウエルブックスで知人へのおみやげ探しをしたり、セールの書籍を買った。休憩がてらに向かいにあるスターバックスに入ったらホームレスの方同士がいざこざを起こしているシーンに出くわした。ポートランドらしいと思いつつ、それを冷静に対処する店員の女性の方の対応に感動した。よくテレビ番組のネタにされるけれど、アメリカのスタバは「ホーボーのトイレ」とも揶揄される。確かに、通っていたハリウッドのスタバでもいつもいるおじいさんがいた。ダウンタウンでこの季節だとホームレスの方が複数入り浸っていてもおかしくない。不思議なのはこうした光景が普通であるということだ。新聞を読んでいるビジネスマンの隣に犬を連れたホームレスの方がいるというのはアメリカならではの光景で、誰も彼らと距離を取って接したりしない。日本だったら彼らが生活の境界をまたいでくるようなことはない。このスターバックスで起きたのは一人のホームレスの飼い犬が、もう一組のホームレスの子供の手を噛みついてしまったことだ。噛まれた子供が大声で泣き叫んでしまったため、店員が駆けつけた。血の吹き出る子供の手を取って包帯を巻いて処置をしてあげる一方で、窓の外に並んだプラカードを掲げたよくわからない団体がなにかの主張をしていた。彼女は即座に彼らを通報していて、こんなにスターバックスの店員の仕事は大変なのか、、、、と彼女のことが少し可哀想に思えた。その後、ターゲットで日本の人たちへのお土産を買った。

バスにホテルに戻り明日に備えて早く寝ることにしたが、テレビでE.T.がやっていたので惰性で見てしまった。しかしそれがこの日一番の「サンクスギビング感」のある行為だったような気がする。寝ようと思ってランプを消すと、備え付けのアメニティに耳栓があった理由がわかった。ライブハウスから余裕で音漏れがあるし、マリファナを決めたおっさんたちが外のストーブの周りで深夜二時過ぎくらいまで騒いでいるからだ。それに対してなにか文句を言うわけではないのだけれど、アメリカのおっさん達はマジで元気すぎるってことだ。

hiroshi ujiietrip