ESSAYS IN IDLENESS

 

 

PORTLAND 20191127

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ポートランドは観光に来る場所ではなくて、自分の住んでいるところと同じように過ごすのが一番楽しい場所だと思う。具体的には、東京で週末やっていることを同様にここでもやればそれだけで最高の1日になるということだ。それだとなんのために金を払って旅行しているかわからない、という人もいるかもしれないがそれが一番理想的な旅だと思う。よく「アメリカで何をしてきたんですか?」と言われるけれどいつも返答に困る。だいたい、スーパーに行って古着屋にいって、ハンバーガーを食べて寝る。これしかしていない。たまに映画を見たりライブを見たりもするが、これといってアメリカにしかない有名な観光地にいっているわけでもないので聞いた人も少し気まずそうな顔をすることがしばしばある。そういう人たちの気持ちもわからなくないが、こっちは根っからのずぼらでいい加減な性格をしているものだから真面目に旅程を考えられないし、旅程を立てたとしてもそのとおりに行動できる気が全くしない。一日に一つか二つやることを決めたらあとはひたすら直感に任せて何をするかを決めるだけだ。僕が人とあまり旅行できないのはそのせいで、よほど気の合う人でないとストレスが溜まりすぎてしんどくなってしまうだろう。

この日は手始めにホテルのカフェで無料のコーヒーをもらい、それを片手に街へと出る。アーバンアウトフィッターズへ行ってセール品を漁り、昔なじみのスリフトやレコードショップを回る。ミシシッピレコーズで店オリジナルのTシャツやゴスペルのカセットを買い、ホールフーズではトイレを借りるためにCBDのクリームを買ってみたりした。昔なじみのハリウッド駅に降り立ち、アンティークアレイで長々と買い物をする。42nd Marketという見た目の古そうな建物の地下におびただしい量のアンティークや古着がある。広いスペースに個人でブースを出しているのがこのお店の特徴で、各ブースによって品揃えや価格帯が違う。運がよければセールを開いているブースもある。僕はポートランドにいる間にこの店に何度も来ては古い写真や服を買った。様々な人のキュレーションが働いた空間なだけに、探せば探すほどわけのわからないものが出てきていくらでも時間をつぶすことができる。穴の空いたナンセンスなTシャツや、レジ前にあった意味のわからないアート作品的なものを買って帰った。その近くにはリトルアックスレコードという素晴らしいレコード屋があり、ここで大量にカセットテープを買った。店の中には看板犬が居て、買い物をする僕たちのほうに嬉しそうに駆け寄ってきた。

このハリウッドの名店と言えば、チャイニーズレストランの「山東」。ポートランド滞在期間、ハリウッドに住むことができて良かったと思う理由の一つがこのレストランだ。折に触れてここに来ては、ポークベリーヌードルを食べたことが懐かしい。昔を思い出しながらチャーハンと担々麺を頼んだけれど、相変わらず爆発的にうまい。そしてめちゃくちゃ量が多い。周りの初見と思われる客が何も知らずに数品頼むが、だいたいテイクアウト用のボックスをオーダーする。体のでかいいかにもアメリカ!って感じの夫婦でさえ食べることができない量と言えば想像しやすいだろうか。僕はここで初めに麺を大盛りで頼んで死にかけたことがあるので、それからは普通盛り以外を頼んだことはない。麺は日本で言えば大盛りより多くて、チャーハンは2人前くらいが出てくる。普通に考えればめちゃくちゃ多いし、歯も痛いから食いきれないだろうと思ったけれど、脳内物質のせいで痛みを全く感じず普通に食べきることができた。記念に店の前で写真を撮り、この日は大満足。本当になにもしていない一日だったけれど、最高の日だった。

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