ESSAYS IN IDLENESS

 

 

American Boyfriend - Trip to Okinawa - Day 2

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窓に打ち付ける雨音で目が覚める。昨晩の賑わいから一転、新しい元号の始まる最初の1日目の天気は最悪と言ってもよいくらい悪かった。昨日の昼寝の際に、古いホステルのエアコンが利きすぎたせいで喉が痛く、体の調子も思わしくない。出歩きたい気分でもなかったし、昨日の疲れも残っていたのでせっかくなので昼過ぎまで思い切って寝てみる。

14時を過ぎた頃、雨脚が弱まったのを確かめてから那覇市内をまたぐるぐると回る。宿泊しているホステルの近くには旭橋駅があり、その隣には那覇市立図書館がある。自分にとっては、その街の図書館に行くというのも旅行の楽しみの一つで、置いてある本やそこで過ごす人々の様子を見るのはとても興味深い。那覇市立図書館は吹き抜けが非常に気持ちのよい図書館だった。1Fは子供向けの書籍とプレイスペースがあり、小さな子どもやその親御さんが静かに本を読んでいる。子供が落ち着きたくなる様々な仕掛けが施されているのも特徴的だった。2Fより上のフロアは大人向けの整った空間で、とても広い。蔵書のラインナップも充実しているし、自習スペースの間取りやデザインが素晴らしく、以前行った高雄市立図書館に似た印象を覚える。その街の公共施設がこのような形で整備されているのを見ると、ぐっと愛着が湧く。

その後、雨を避けるために平和通り商店街に入り散策をする。昨日行くことができなかった「花笠食堂」という名前のローカル感のある定食屋で煮物定食を注文。白味噌ベースの甘い味付けのお味噌汁や、三枚肉の角煮、すべての味付けが素朴で優しい。もし、平和通りの商店街で行く店に困ったらこのお店に行くことを強くおすすめする。店の店員のお母さんもとても優しく接してくれる。お菓子屋さんでできたてのサーターアンダギーを頼み、少しずつつまみながら商店街の中を練り歩く。途中体が雨に濡れて寒くなってしまったので、お土産屋で沖縄アロハを買い、それを着たままその日は過ごした。商店街の中心にある牧志公設市場で大きなエビや色とりどりの魚を見て回り、商魂たくましい中国人やベトナム人の店員から熱烈な接客を受ける。ここでは買った魚をその場で調理してくれるらしく、もし花笠食堂でご飯を食べていなければここで鮮魚を使った料理を食べれたのになぁ、と少しだけ後悔した。

那覇の街を歩くとわかるのだけれど、「いい喫茶店」があまりない。ローカル感のある、タバコが吸えてゆっくりと腰を据えられるカフェというのは実は見つけるのが難しい。喫煙可かどうか、という観点でいうとベローチェもドトールもルノアールも、エクセルシオールもサンマルクカフェもない。もしかするとこの街にはコーヒーを飲むという文化がそこまでないのかもしれない。そんな折、「喫茶スワン」という明らかに怪しい佇まいのカフェ・スナックにたどり着く。薄暗い階段を登り店のドアを開けると聞こえてくるのはお客のおじさんのカラオケ。もはや昔の歌謡曲過ぎて誰のなんの曲かもわからない。おじさんが歌い終わると店員のおばあちゃんが拍手をする。わずかの間薄暗い店内に沈黙が流れる。その沈黙を嫌ってか、別のレーザーディスク!を取り出して機械ににセットする。そうするとまた別の曲が流れ始め、そのおじさんが歌い始める。タバコを吸い、新聞を読みながらその様子を眺めていると、東京とはまた違う時間の流れを感じる。しばらくすると、お店の常連と思われる別のおばあちゃんが入ってきて別の曲を歌い始める。

おばあちゃんが何曲か歌い終わると、「それじゃあデュエットでも行きますか!」とおばちゃんがレーザーディスクをセットし、おじさんとおばあちゃんのデュエットが始まった。歌い終わりに合わせて僕も拍手をしなければいけないような気がして、律儀に何度も拍手を送った。

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