American Boyfriend - Trip to Okinawa - Day 5
朝起きてローズガーデンという名前のレストランにてブレックファストを食べる。地元の人やアメリカ人の人も多く訪れる老舗のダイナーで、内装や、光のこもり具合、椅子やテーブルの感じ。どれをとってもアメリカそのものといった感じで非常に好感が持てる。価格帯やボリューム、味つけもまさにアメリカのダイナーという感じで、2年前の旅がとても懐かしくなった。僕が頼んだのはエッグベネディクトだったけれど、店の名品はステーキ。おそらく何を食べてもアメリカを思い出すのだろうと思う。沖縄に来たらぜひまた寄りたい店の一つになった。
その後、観光ガイドなどには殆ど書いていないであろうベトナム通りの青空市へ。おじいちゃんやおばあちゃんが基地前の細道に車で乗り付けて思い思いの品々を売っている、東南アジアの露天みたいな場所だ。少なくとも僕が行ったときにはうさぎは売っていたが、場合によってはヤギも売っているらしい。古臭い小物からケーブル、ネジ、怪しげなVHS。壊れている扇風機や汚れきった衣類まで、なんでも雑にものが並べてある。金網にひっかけてある服は風に吹かれてホコリを撒き散らしていた。僕は記念にコーラのノベルティの灰皿を買った。
そのまま北上し、シーサイドドライブインというレトロなドライブインで休憩。本当は中でゆっくりしたかったけれど、こうしたレトロな国道沿のスポットは観光名所となり、多くの人が並んでいていたので断念をせざるを得なかった。アイスを片手に日陰で涼む。海沿いに建てられているドライブインだけあって、目の前は美しい遠浅の海がひろがっていた。せっかくなのでそのまま遠浅の海を散歩することにした。道中のナマコを踏みつけそうになりながらも、離れ小島まで徒歩だけでたどり着くことができた。海の水はあまりにも透明度が高いものだから、揺れる水面を見ていると自分が揺れているのではないかと思うくらいだった。ゆらゆらと揺れる海藻や、すばやく動き回る小魚。そしてめちゃくちゃでかいナマコ。すべてがくっきりと見える。
夜までA&Wによったり、ショッピングモールに寄ったり、夕暮れの海をダラダラと眺めながら過ごしたあと、昨日行きそこねたチャーリー多幸寿という名前のタコス屋へと寄った。コザの街の外れにあるタコスの名店として名高いこの店には一度行っておかなくてはならなかった。この街のタコスは「チャーリー派」か「オーシャン派」で分かれると、昨日会ったおじさんが言っていたが、タコスの味についてはどちらも同じくらいうまい。僕が頼んだのはタコライスとタコスのセットにスパイシーソースだったが、これは間違いなくアタリ。というか、このタコライスは今までの人生で食べたタコライスの中で一番美味しいと思った。しっかりと味付けがされたお肉と、濃いチーズの風味。それに加えてトマトの酸味やキャベツの食感がしっかりとマッチし、食べていて非常に多幸感がある。そして安い。内装は古いアメリカのファストフード店のような感じで、壁にはこれまでの長い店の歴史を示すようにたくさんのお客さんの写真が飾られている。閉店近くだったこともあり、客は僕たちの他にあまりいなくて静かだったが、きっとお昼にはたくさんの人達で賑わっているに違いない。
既にここでもうお腹がいっぱいだったのだけれど、コザのアーケードの逆側に「24時間営業」と書かれた喫茶店を見つけてしまい、入らざるを得ない状況に。恐る恐る入ってみると、僕たちの他には誰もいない、ひっそりとした昭和感の残る素敵な喫茶店だった。名前を「フリーポート」といい、その名前の響きだけでも入ってみたくなってしまう。すべてのテーブルが昔懐かしいポーカーや花札のコイン式のゲームテーブルとなっており、実際にコインをいれたらプレイができる。お店のおばあちゃんが言うには、この店は今ではもう24時間ではないらしいが、25時までは営業をしているとのこと。戦後の高度経済成長時代には、多くの人がこの店を訪れ夜通しゲームをしていたそうな。当時は風営法の関係から深夜を超えて商売ができなかったので、店の明かりを消して、店内でゲームをする人を受け入れていたらしい。その時代にはかなり儲けていたが、年々廃れていって、今のような形に落ち着いているらしい。「昔はすれ違う時に肩をぶつけ合うくらい、人がたくさんいたんだよ。東京みたいに」とおばあちゃんがいう。こんなに素晴らしいお店が、この時代、今日まで生き残っていてくれたことに感謝しかない。だから、また沖縄に来たらこの店で漫画を読みながらダラダラと5時間くらい過ごしたいと思う。