ESSAYS IN IDLENESS

 

 

LOS ANGELES 20191115

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思い返してみると、社会人になってからは夏休みを取ったこともなければ、海外旅行にいったこともない。友達は毎年どこかに旅行をしているというのに、自分は仕事に追われて海外に行くことはおろか、夏休みを取るという選択肢もなかった。今年になって初めてまとまって取った休み、10日間。それを使ってポートランドとLAに遅めの夏休みを過ごしにいくことに決めた。

LAXまでの飛行機に乗っている間、座席が窮屈だったためか足のしびれや体中の疲れがひどくなった。おそらくエコノミークラス症候群のようになっていたし、全く寝れずとても疲れたフライトだった。その上入国審査には90分以上もかかるし、散々な旅の始まりとなった。空港に降り立ったとき懐かしい空気の匂いがした。外に出るとTシャツ1枚で過ごせるくらい暖かかった。一本タバコを吸い、コーヒーを飲み、旅の準備を整える。車をピックアップし、2年ぶりの左ハンドルの感覚を確かめながら、アメリカのハイウェイを進んで行く。

アメリカのハイウェイを初めて走ったときの感動は今でも覚えている。ハイウェイ入り口のヘアピンカーブを登りながら、空に向かって進んでいく。フロントガラス越しに見る色あせたアメリカの空と道路の灰色のコントラストが綺麗で、それだけでアメリカに来た価値があると思えてしまう。

何度か道を間違えたり、事故を起こしそうになって肝を冷やしたりしながら、なんとか最初の宿があるイーグルロックというLA北西部の郊外へと向かう。イーグルロックはLAの外れにある「今後ヒップになる街」らしい。とりあえずターゲットに寄り道して水と食料を買った(買った食料は結局ほとんど捨てることになったが)。モーテルは気前のいいヒスパニックらしきおばちゃんが切り盛りする素晴らしい宿だった。最初はかなりゲットーなところに泊まってしまったかもと思ったけれど、剥がれかけていた外装はリフォーム中のせいだった。こうしてまたモーテルに泊まって旅ができるというのが何よりも嬉しかった。

時差ボケのためか、もうこの時点でかなり強い眠気があったことを覚えている。ちょっとだけ休んで、車で20分くらいのところにある大きなモールへと向かった。「大きいモール」と言ってもケタが違っていて、モールが4つぶんくっついたくらい大きい。駐車場のキャパシティだけでゆうに数千台はありそうな気がする。モールに行くと様々な人種、年代の人達がにぎやかに買い物をしていた。若者がフードコートでだべっていたりするのは『エイスグレード』で見たばかり。スニーカーショップや服屋を適当に見て回りながら、アメリカの若者の暮らしを感じていた。あとから聞いてわかったことだが、この日いったモールはアヴリルラヴィーンの『Complicated』のMVに出てきたところらしく、まさに90年代の幻影をカルマのように背負った我々にとっては絶好の場所だったと言えるのかもしれない。知らず識らずのうちに、こういう出会いがあるのだからアメリカは面白い。

モールから出るとすぐ近くにあるのは、我々の心のふるさととも言えるIN-N-OUT BURGER!なんの迷いもなく脊髄反射で入店する。注文するのはもちろんシェイク、ポテト、そしてダブルダブルのバーガーのセット。これで$10にも満たない価格というのが驚きでしかない。昔と何一つ変わらぬ濃厚で美味しいシェイク、素朴なポテトの味付け、ジューシーで余分な味付けのない洗練されたバーガー。これがアメリカの真なる三位一体であり、正義であり、経典である。もし人が原罪を背負うとするならば、すべてのバーガーとシェイクをこの店と比較しなければならないということだと思う。自分の周りには既にたくさんの人が楽しそうにバーガーを食べていた。お年寄りもいれば、ティーンネイジャーもいる。どれだけ店が混んでいても優先席のところだけは開いているのも素晴らしい。このバーガーを食べれば人はきっと優しくなるだろうし喧嘩をする気もなくなるはずだ。口の中に肉を詰め込みながらこうした素敵な光景を眺めていると、自分は今アメリカに来たんだなという実感が強く湧いた。

※備忘録
日本からのレンタカーの手配はアラモが良い。ポートランドでもLAでも有人カウンターを一切介さずにレンタルをすることができるし、とても安い。プロテクションプランに加入した上で1週間$300程度なので、仮に一人の旅行でも気軽に乗れるはず。

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