ESSAYS IN IDLENESS

 

 

LOS ANGELES 20191118

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朝起きて身だしなみを徹底して整えて、この旅で一番ハイソサエティさを醸すシャトーマーモントへと向かう。

この場所に対する思い入れと言えば何をおいてもまずソフィア・コッポラの『SOMEWHERE』しかない。家にポスターすら飾っているくらいこの映画のことは好きだし、ソフィア・コッポラ作品の中でもかなり好きな方だと思う。正直退屈な映画だという一部の人たちの言うことも完全に理解できるけれど「映画をやろうとしている」感じが作品を通してしっかり伝わってきて、内容云々よりもそういう姿勢に胸を打たれる。若き日のエルファニングが出演しているけれど、この役どころ以上の作品が彼女のキャリアにおいてあるのかどうかについては完全に謎ではある。

車に乗り込んで、ジュリアン・カサブランカスの『I’ll Trying Anyrhing Once』を聞きながらホテルへと向かう。ホテルへのアプローチは日本のホテルのように仰々しくなく、ハリウッドの小高い丘の上にひっそりと佇んでいた。駐車場の係員に鍵を預け!いざホテルの中へと進んでいくが、そもそも入り口がひっそりしすぎてどこだかわからずドギマギした。ほんとうに小さなエレベーターホールで、ここから上に上がったらロビーに着くのかどうかすらもわからなかった。とりあえずボタンを押すと映画でしか見たことのないようなシャッターのついたレトロで荘厳な扉が開く。かなり暗めに設定された照明に気品のある赤い壁がシックすぎる。こんなに小さな空間ですら感動しっぱなしでシャトーマーモントでの朝食が始まろうとしていた。

エレベータを出るとロビーへ。陽光が大きな窓から優しく差し込み、広く落ち着いた空間が美しく照らしている。ソファやテーブル、デスクランプや置かれた植物までもが時が止まったかのように昔からの気品を携えているように感じられる。美しい調度品の数々と敷かれた深い緑のカーペットのカラーバランスが完璧だった。

受付を済ませ、朝食の席へエスコート。身なりの整ったホテルマンという感じがひしひしとスタッフから伝わってくる。ロビーではなく、中庭が朝食の場所となっているようだった。決して広くはないが、開放感があり日差しが適度に遮られていて心地が良い。籐の椅子や机に敷かれたクロスは決して華美ではないが一癖あるデザインだったように思う。しかし、そこで長い間使われるうちにホテルの雰囲気に馴染み、これまで訪れたどのホテルとも違う独特のテイストを醸していた。朝食の席ではしずかに朝食を取る人たちがちらほらいた。周りの人達を見ていると、きちんとした身なりの人もいれば、Tシャツやジーンズ、スニーカーで来ている人もたくさんいて、わざわざ日本から不安に苛まれながらセットアップを持ってきた自分の努力が無駄になったような気がした。下手に「こいつら気合い入れてんな、、、」と思われるのも嫌だったが、実際のところはどうなのだろう?周りには明らかに何かしらの業界人らしき人たちもいたし、映画の話題を自分の席の後ろでされているような気もした。この場所はやはりそういう場所で間違いがないのだろう。我々が頼んだのはポットのコーヒーとエッグベネディクト。もっと値段がするのかな?と思っていたけれどそこまでではなく、むしろサービスと雰囲気を鑑みれば全然安い方だと思う。エッグベネディクトはもちろん美味しいし、コーヒーは二人で8杯分くらいはあった気がする。シャトーマーモントのスタッフの人達は全員とても気品があり、気さくだ。そしておしゃれだった。女性のスタッフが着ていたブラウンのつなぎの制服はほんとうに素敵だったし、男性スタッフはどんな人にでも別け隔てなく優しい。中庭に流れる緩やかで穏やかな空気は決して忘れることはないだろうと思う。最後の最後まで緊張はほぐれなかったけれど、最高の体験になった。会計を済ませて席を立つと、なんとデイブ・シャペルがこれからホテルに入ろうとするところに出くわした。

その後、海を感じにサンタモニカ・ピアへと向かった。海沿いをブラブラしてシェイクを飲んで少し休憩しながら、昼間のサンタモニカも結構いいなと思った。前に訪れたときには夜だったし冬で寒かったけれど、今回は海の風景を存分に楽しむことができてよかった。

一通り海を満喫したところで、浅倉たっての希望で『The Office』のロケ地へと向かった。アメリカでカルト的な人気を誇るこのドラマはアメリカの俳優や有識者の間で非常にファンが多い。わかりやすいところでティモシー・シャラメやビリー・アイリッシュなどがそうで、もちろんその他多くの人達がそうである。結論から言うと、僕たちがこのロケ地を見ることができたのは車窓から一瞬だけだった。割とサグい雰囲気があるLA郊外のスタジオ地帯なだけに、。あたりは駐車できそうな雰囲気の場所がなく、なんなら少しでも車を止めようものならガードマンが駆けつけてきそうな気すらした。完全に雰囲気に飲まれた形で僕たちはこの場所を去った。道中、行ってみたかったトッパンガ州立公園という変わった名前の場所を通ることができたのが幸いだった。

更に、この日はたくさんの場所を巡った。HAIMのPVで使われたLA郊外のバーンズアンドノーブルに行って、その付近のスリフトや店をまわり買い物をした。そして、夕ご飯はフランク・オーシャン行きつけのコリアンダイナーで食事をした。何ということのないかなり普通のどこにでもありそうな店だったが爆盛上等、料理は素朴で美味かった。壁にはたくさんの著名人らしき人(俺はほとんど知らなかったが)の写真が飾られていたが、その中にフランク・オーシャンの写真はなかった。おそらく店の主人が認識していないのだろうが、、、、、

帰りしな、フットロッカーに立ち寄るためにいったモールはハリウッドのど真ん中にあった。そこではYoutuberの表彰式のようなものがやっていて、ド派手な出で立ちの男女が次々に現れた。なんの興味もないけれど、こういう場所で銃乱射事件が起こったらきっと僕たちも巻き込まれるんだろうなとふと思った。こういう考えが出てくるのはとても悲しいことだと思う。

夜モーテルに戻って、ダサい壁紙を見ながら「やっぱりイケてないなぁ、、、」と思いながら、ストンと眠りに落ちた気がする。この日はたくさん運転して、だいぶ疲れていたのかもしれない。

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