SEE EVERYTHING ONCE -DAY14-
なんだか寝苦しかったらしく朝6時前に目が覚める。いつもなら二度寝するところなのだけれど、身体に鞭を打って身体を起こし、この日は朝起きて朝焼けの海を見に行くことにした。東海岸ということは日の出が海で見られるはず。その予想通り、真っ赤に燃えるように赤い太陽が海からまさに上がってくるところだった。海の水はエメラルド色に輝いていた。偶然、海岸沿いの人気のない遊園地を見つけ、嬉しさのあまり走って近寄る。当然なのだけれど、ゲートは締め切られ、どの遊具も動いていない。鉄柵で囲まれた遊園地はきっと日中になっても大賑わいになることはないのだろうなと思った。チケット売り場の日差しよけや、ベンチのテーブルに突き刺さっているパラソルの色合いは潮風と日差しを長い間うけてだいぶ褪せてきている。その色味と朝焼けのオレンジ色が混ざり合うとそこだけ1950年代なのではないかと思えてくる。潮風は冷たく外に出ていられないほどに寒い。まだ9月も上旬だと言うのに、この風の冷たさはいったいどこからやってきているのだろう。人気のないビーチを散歩している犬がいる。こんなにきれいな海岸線を散歩できるなんて、アメリカの犬は本当に恵まれている。実家近くの田圃道を毎日歩いているうちの犬もまぁいい生活だとは思うけれど、この壮大な風景を毎日歩けることには逆立ちしても敵わない。そのあと、日が登りきる前にいくつかのビーチを渡り歩いた。有名なライビーチを含め、その付近一帯はいくつも美しい海岸線が続いている。ホテル・ニューハンプシャーのような桁違いに豪華や、海の家など、避暑地なのかリゾートなのかわからないけれどとにかく美しい海岸線だった。人はまばらで、カラフルなパラソルの日光浴をする人たち、椅子に座って本をよむ人たち、ランニングをしたり、釣りをしている人たちがゆっくりとした時間を過ごしていた。非常に裕福さと人生の豊かさを感じられる光景だった。
そのまま国道1号線を下りマサチューセッツ州にいくと、なんだか息苦しくなった。駐車場は狭いし、運転はみんな荒いし、高速道路の渋滞はこれまでで最悪の規模だった。人はなんだか不親切。トイレを借りられる場所もないし、英語は東海岸の独特のなまりがあって聞き取りにくい。暇つぶしに地図を見ていると、その当時公開された『マンチェスターバイザシー』という映画があるのだけれど、まったく同じ地名の場所を見つけたので散策がてら寄ってみる。確かに、映画に出てきた湖やそれらしい場所をいくつも見つけることが出来た。どうやらこの街のことらしかった。街はかなり小さく、映画の舞台にするにはあまりにも普通のようにも思われた。細い道に入り込むと、いやらしい別荘地帯のようなところに迷い込んでしまって怪訝な顔をされたりもした。金持ちの文化と言う感じがして、なんだか居心地がわるかった。