ESSAYS IN IDLENESS

 

 

SEE EVERYTHING ONCE / TRIP TO SOUTHERN DAY5

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今日はついにロサンゼルスに入る。In-N-Out Burgerで朝ごはんに済ませ車に乗り込む。ハイウェイを走っているとお決まりの渋滞に巻き込まれる。道路の両脇に見える椰子の木は僕が映画で見たロサンゼルスの光景にピタリと一致する。市街にいいモーテルが取れたのは運が良かった。リーズナブルで、プール付き、清潔、そして駐車場もきちんとついている(お金を取られたけれど)。そのモーテルの一階にはスウィンガーズというダイナーがあり、客層と内装をちらっと見たけれど最高の雰囲気だった。今日の夜はここでコーヒーでも飲むことを決めた。前回来たときには注意を払えなかったけれど、車でLAのストリートを流して走るのは気持ちがいい。突き抜けるような青い空と、広い道路、その両脇には規則的な感覚で生える椰子の木と、いい感じに色あせたカラフルな店舗が並んでいる。きっと音楽をかけながらオープンカーで走ったら気持ち良いんだろうななんて思いながら、キョロキョロとあたりを見回しながら運転をしていた。当時話題になっていた、

今日は街の中の建築を巡ることになっているので、まずバスでダウンタウンへと行く。前回見たウォルト・ディズニーシアターは相変わらずな感じで、やっぱりそんなに好きにはなれなかった。その後、ブラッドベリビルを見て、ラストブックストアへ行き、エースホテルを見た。このあたりは前回見たこともあってそこまで感動はしなかったけれど、LAの町並みを見ているのは楽しかった。『ミリオンダラー・ホテル』に使われたというビルもあったのだけれど、下から見上げると角度がありすぎて実際のところよくわからなかった。グランドマーケットプレイスという大きなフードコートのようなところでマッシブなメキシカンのブリトーを食べて腹を満たし、更に歩いて行く。やはりこういう大きな街に来ると、自分の居場所を見つけにくく、街全体が忙しく動いていて自分のペースで何かをすることが難しいということだ。もし自分が一人で旅をしていたとしたらこの街を楽しむのは難しいだろう。早足で歩きまわって疲れるだろうし、お店に入ろうにもどこか気後れしてしまったりもするだろう。そしてその間自分は一言も口をきけないわけで、それはあまり楽しそうな旅とは言えないのかもしれない。ただ今回は気のしれた友人二人と一緒だから、ただ歩きながら会話をしているだけでも楽しいし、自分だったら行かないような場所にもいけて、新しい気付きや発見がある。何より危ない目に合う可能性が低くなるというのは、こんなにも心が楽になるのかということに驚く。夕方5時過ぎになるとあたりは暗くなってきて、夜のLAの雰囲気が垣間見える。この街のネオンはやっぱり綺麗で魅力的だ。そのネオンの下や、店先から溢れる光に人が屯していたりするのは単純に絵として格好いい。若者だけじゃなく、どんな年齢や人種の人達も個性を競い合うようにおしゃれをして通りを歩いているのもとても様になる。僕はどんなに頑張ってもこの街の一員にはなれないけれど、もしこの街で10代、20代を過ごしていたらどれだけ楽しく刺激的だっただろうと思う。前来たときには、なんとなく寛容じゃなくて人々が競い合うように忙しく動いているイメージをこの街に持っていたけれど、今回はもっと自分の感性に親しいこの街の側面をしれそうな気がしていて、この街についてもっと知りたかったり、もっと多くの時間を過ごしてみたいという気持ちが強くなっていくのを感じていた。

夜になるとパトカーのサイレンはたくさん鳴り響く。ダウンタウンでなくても物騒なところは変わらない。なんだか夜ご飯を食べに行くのもつかれたので、いったんホテルに戻ってシャワーを浴びて一休みをする。部屋にあったテレビを付けるとドジャース戦をやっていた。せっかくLAに居ることだし、それに日本人がチームにいる、そんな単純な理由だけで普段はたいして野球を見ないのにドジャースを応援していた。意外にも応援は楽しくて盛り上がる。稀に見るレベルの乱打戦でお互いのピッチャーが打ち込まれまくって、12対12のまま延長線へと突入。10回裏にヒューストン・アストロズにサヨナラホームランを打たれて試合は終わった。やるせない気持ちでタバコを一本吸ってから階下にあるダイナーへと足を運ぶ。ハロウィンのコスチュームと内装に包まれたこのダイナーは確実に地元民に愛される場所だと入った瞬間に確信できた。客層がほぼ100%アメリカ人しかいなくて混み合った店内は地元民のわちゃわちゃとしたおしゃべりで満たされている。店内には少し昔のインディーミュージックがBGMとしてかかっているけれど、周りの声が大きすぎてほぼ聞こえない。客層は若いおしゃれな女の子やヒップスターを絵に描いたような男、飲んだくれのおっさん、ビジネスマン風の人たち。色々なタイプのアメリカ人がいるけれど、こういう光景を含めてダイナーの風景なんだなと改めて気付かされる。ショアのいくつかの写真のように誰もいないダイナーの光景もアメリカらしいと思うけれど、エドワード・ホッパーのナイトホークスのように誰かが写り込んでいる光景のほうがアメリカらしいのかもしれない。出てきた料理はやはりどこか味気なさがあり、今はもう何を食べたのかも覚えてないけれど、この味気無さの味も含めて理想的だったなと思う。明日も同じモーテルに泊まるのだけれど、また寝る前にこのダイナーに来るだろう。コーヒーさえあればここに何時間でも留まっていられるような気がしたけれど、たくさん歩いた日は眠くなってしまう。深夜12時を回ったあたりで部屋に戻ったのだけれど、改めてモーテルの下にダイナーがあるという発想は天才的だ。ビバリーローレルモーターイン、LAにまた来る機会があれば必ずここに泊まろう。

hiroshi ujiietravel