SEE EVERYTHING ONCE -DAY22-
この日はニューヨークの街中を一日かけて歩いてみることにした。街の中にある本屋や映画館(どれも閉まっていた、、、)を見てみたり、ブルックリン・ブリッジを歩いてみたり、とっても美味しいパストラミが山盛り入ったサンドイッチを($20もした!)を食べて、コーヒーを飲んだりしながら過ごした。かつて様々な小説や映画の舞台になったこの街で、僕が印象に残っているのはポール・オースターの『スモーク』という話。その映画(小説も同様)の中でハーヴェイ・カイテル扮するオーギー・レンがタバコ屋をやっているのだが、そのタバコ屋にいきたくて仕方がなかった。ポール・オースターが「多様性のなせる奇跡」と呼んだこの街の一角にそのタバコ屋は「かつて」あったのだけれど、今はもう別のお店に変わってしまっていた。この街の騒音を聞いていると、この街の移り変わりの早さを感じる。どのビルも真新しく変わってきているし、道路工事や補修作業もひっきりなし。あたりにはドリルやら電動ノコギリの耳障りな音がずっと大きく響いていた。近年のNY観光ブームによって開発されてしまったブルックリンのエリアは少しだけ残念だったように思える。フェリーにのってウィリアムズバーグまでいくと雰囲気は一転、廃れた中華や古着屋、インディペンデントな本屋、映画館が立ち並ぶ。建物にはグラフィティが書きつけられ、ストリートの尖った感じが感じられて心地が良かった。途中強い雨でスタックしてだいぶ辛い目にもあったけれど、またニューヨークにきて思い切りこの街のすべてを歩いてみて回りたいと思う。今回は時間がなくて見きれなかったけれど、ブロンクスやクイーンズといった少し危ないエリアも昼間の時間帯に見て回りたかった。
夜に宿の主人に別れの挨拶をして車を走らせる。夜のニューヨークからペンシルバニアのランカスターへ向けて出発。夜の高速道路は気持ちが良くて、車でいろんな橋を渡ったり、ハイウェイからニューヨークの摩天楼を見渡せる日が自分にも訪れるなんて思っていなかった。ニューヨークから離れるとあたりはもう真っ暗になっていて、鹿や狐を轢いたりしないか心配だった。モーテルについて、となりのガススタンドでコーヒーとビールを買って部屋で飲んだ。もう何度目になるだろうか、こうしてモーテルに停まってベッドに腰を下ろすのは。入り口の喫煙所でタバコを吸っていると次々に車が入ってくる。ピックアップトラックから降りてくる大きなおじさんたちを見ていると、これがアメリカっぽさだよなぁとしみじみと幸せな気持ちになることができた。