ESSAYS IN IDLENESS

 

 

REMAINS OF THE DAY IN PORTLAND

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ニューカラーの写真のような空の青
陽の光を受けた、赤ちゃんの暖かい肌色
バスの手すりのケミカルな黄色
若い可愛らしい女の子のピンク色の髪の毛
ヤング・パンクスの緑のモヒカン
逆光を受けてほわほわと輝く金色の巻き毛
おじさんのかぶる年季の入った辛子色のニットキャップ
カーキ色のウインドブレーカー
バスドライバーのおばさんの紫色の髪の毛と鼻のピアスの銀色
道路脇の芝生のみずみずしい緑
街路樹になった真っ赤な木の実
風船の赤白黄色のトリコロール
映画館のネオンの怪しくきらめく三原色
優しそうな老夫婦の銀色の白髪
クラシックなダットサンの黄土色のボディ
古い車のくすんだ白色
お祝い事でもないのに子供のかけるサングラスの蛍光グリーンやピンク色
おばちゃんの着てる真っ赤なパンツ
スケートデッキの黒、青いバンズ
若い女性の腕に巻き付くカラフルなタトゥー
自転車のヘルメットの青、赤、黒、白、オレンジ
子供の靴のパステルカラーの青とピンク
緑色の長靴はアマガエルのような緑色
真っ黒な猫の衣装を着た子供、おしりには尻尾が生えている

家からスターバックスに着くまでの10分の間、目についた色をメモしていた。アメリカのカラーパレットはこんな色をしている。もうこんな光景も色彩も見納めかと思うと歩きながら涙が出そうになる。いつだってどんなときだって写真に収めたくなる光景なんてそうはないだろう。カフェからぼんやりと通りを眺めていると、ひとりの少年が目の前でバイオリンを弾き始めた。少し弾いては手に息を吹きかけてあたため、手をこすったり、もう辞めようかと逡巡したり、何度もそれを繰り返す。たまにお金を渡す人がいたり、話しかけたりする人がいて、この、寒いポートランドの中でとても暖かい光景だったように思う。目の前で起きていることをどう見るかという自分の問題でしかなくて、もし見方を選べるのだとしたらたとえ偽善や綺麗事だとしても、より優しくて暖かい方を選んでいきたいと思った。

彼はしばらく演奏をすると、ハンチングをかぶり直し、お金をポケットに、バイオリンをケースにしまい通りの向こう側に消えていった。夕焼けに染まるその背中とバイオリンケースに落ちる影が綺麗だった。目に映る物すべてが大切なアメリカの記憶だった。

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