SEE EVERYTHING ONCE
ようやく長い旅を終えた。29日目にネバダの砂漠での絶景を見た後の虚脱感が徐々に抜けてきて、ようやく旅を振り返れそうな気持ちになってきた気がする。僕の頭のなかに旅の中で見た景色や、温度、音、色彩、人々の言葉、思い浮かんだことが残っているうちに、それを文章にしなければいけない。それよりも先に、まず考えていたのは、僕がこの長い旅をなんと名付けるか、ということだった。どんな言葉が良いだろう。例えば長田弘さんのようにするか、ケルアックのようにするか、それか何か映画や曲のタイトルを参考にするか。いろいろなことを考えたけれど、たまたま車内で聴いていた曲の歌詞のワンフレーズ(たぶんAlohaかなにかの曲だった気がする)、「See Everything Once」という風に呼ぼうと思う。なぜかこのフレーズが聞こえてきた時ピンときたのは、自分の性質をうまく表現していることと今回の旅が一致しているように思えたからかもしれない。僕は何かを一度にしなければ気が済まないたちで、途中で切り上げるとか、諦めるということが苦手だ。熱いものは熱いうちに食べきりたいし、冷たいものが冷たいうちに飲みたい。順序を考えてバランス良く食べるということも苦手だし、自分でこうと決めたらそのとおりに遂行しないと気がすまない。たぶん何かしらの発達障害なのかもしれないと最近自覚してきているのだけれど、今回の場合、どんなに少しでもいいからアメリカの全てを見てみたいというそもそもの衝動があった。次の旅まで日がないから少し急ぎにはなるけれど、出来る限り丁寧に記憶を辿りながら思い出を記していこうと思う。ポートランドはもう秋になっていた。