ESSAYS IN IDLENESS

 

 

THE FIRST THURSDAY

なぜこのファーストサーズデイというイベントに今まで来なかったのか、というくらい後悔をしたのがこの木曜日。ポートランドでは毎月の第一木曜日になると、パールディストリクトという街のおしゃれ地区のギャラリーが一斉に開放される。小さなギャラリーや美術学校には作品が展示され、来場者に対して無償で解放される。軽いご飯や飲み物も行く先々で気軽にもらうことができる。パールディストリクトの倉庫街には即席のイベント会場が出来上がり、音楽を演奏する人がいたり、フードカートが並んでいたり、それを求める人達でとても混み合っている。客層はいかにもポートランドらしいヒップな人たちを中心でいつもよりも華やかな雰囲気がその付近一体に漂う。こちらであったデザイナーのギーレンにガイドされつつ、この周辺のギャラリーを回っていく。行く先々で彼の知り合いに会い、挨拶を交わす。立ち話をして、一緒にお酒を飲む。別れ際には握手をしたり、ハグをしたり。なんだかとても気恥ずかしいのだけれど、一日に何度も同じことをしていると慣れてくる。ファーストサーズデイのイベントも9時を回るとだいたいの店で終わりを迎える。この日に限り少し遅くまでやっている小さなイベント会場へ向かい音楽を聴く。こうした情報は絶対に地元の人間でないと知り得ないであろう。そういう場所には然るべき人間がいて、これまでのポートランド生活では交わらなかったであろう人たちと話をする。その後、夜遅くでも空いているバーへ行って軽く話しながら、この夜の雰囲気を改めて噛みしめる。なんだか少し東京にいた時のことを思い出すけれど、地域に馴染んでくるというのはこういうことなんだろうなと感じてきた。こちらにてきからもうだいぶ経つけれど、異文化に馴染むというのは本当に時間がかかる。言語的な意味でも、習慣的な意味でも。少しだけその壁を取り払えたような気がするクソほど蒸し暑い木曜の夜だった。

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