ESSAYS IN IDLENESS

 

 

TRYON CREEK AGAIN

「ヒロ!もう今月アメリカを出ちゃうんだっけ?!」と急にテレンスとジェニファーから連絡が来た。こっちにきてから、もうだいぶ長いこと一緒に遊んでくれている気のいいカップルだ。もう毎週のようにどこかに一緒に出かけていて、その度にひょうきんな会話で僕を楽しませてくれる。この日はアビクアフォールズという滝へハイキングへと行く予定だったのだけれど、日蝕の影響で道路の混雑が予想されたためにトライオンクリークという前にテレンスと2人でいったトレイルに三人でいくことにした。平坦な道を話をしながらゆっくりと歩く。結局のところ、僕はまだ暫くの間ポートランドには留まる。でも9月は旅行に出るし、10月は少し忙しくなりそうだ。11月からはまた旅に出てしまうので、そう考えるとこの2人とこうして過ごすことができるのも実はそう長くないのかもしれない。というようなことを全て話す気にはなれなかったから、10月末にポートランドを出ることだけ伝えておいた。週に一度会う、というと多いようで実は少ない。一年で48回週末がある。その48回を、一人の時間と、恋人との時間、友達との時間、そして仕事に費やす。もちろんそんなに毎週会えるわけでもないから実際どんなに中のいい友達でも15回くらい会えたら良いほうなのかもしれない。社会人になって、土日ですらまともに時間が取れない日が続くと、たとえ1回しか友達に会えなかったとしても貴重に感じられる。でも、このトライオンクリークには二度とこれないのかもしれない、と思っていたけれどまたもう一度来ることができた。テレンスとジェニファーにも、また近いうちに会うことができるだろう。もし僕が日本に戻ったとしても彼らには会うことができるような気がしている。

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なんてことを考えているうちに、この短いトレイルは終わり、そのままジェニファーが好きだという昔ながらのダイナー、MIKE’Sに向かう。粗野な味のバーガーや、じっとりと脂を吸ったフライドピクルス、罪深さを濃縮したようなバニラシェイクを飲みながらこのダイナーの雰囲気にすっぽりと包まれていた。店内の様子は昔っぽさを忠実に残しているので、まるでエグルストンの写真やアメリカン・グラフィティに出てきそうな感じがする。今っぽい若い人たちから年配の方まで次々と注文をしに入ってくるところをみると、アメリカで愛されるものがどういうものなのかわかるし、何よりも安堵感がある。おそらくだけど、この感覚は僕が廃れた感じの喫茶店でそこまでおいしくもないオムライスや生姜焼き定食をありがたがりながら食べる感覚に似ている気がする。この国は物凄い勢いで何かが変わっていくように見えて、都市部でもこうして変わらずに愛される風景が綺麗に残されている。お腹が一杯になったところで二人の車で家まで送ってもらう。僕の家の前で二人にハグをして、またねと言って、手を振って彼らを見送る。そしてその夜いつものようにメッセージを送る。「次はどこに行こうか?来週は空いているかい?」

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