ESSAYS IN IDLENESS

 

 

LOST LAKE

オレゴンの東側、フッド山の山間にロストレイクという名前の湖がある。車で二時間弱、そのかっこいい響きの湖まで気持ちのいいドライブだった。夏の風が流れるコロンビア川の脇を通り、果樹園や老朽化した家屋をいくつか通り過ぎ、森林の中を少し進んでいくとその湖はあった。ボートやカヤック、SUPを持ち込んだ家族連れで賑わっていて、”LOST"という響きとは少し印象が違う。湖は青く澄んでいて、顔を上げれば冠雪したフッド山を大迫力で望むことができる。目論見ではボートを借りて湖に乗り出すつもりが、あいにく全て終日貸出し中ということで、バーベキューを楽しむ家族や、浮き輪でまったりとしている子供やおばさんたち、SUPに乗るお兄さんや犬たちを眺めながら少しの間湖のほとりで過ごした。仕方ないのでそのまま湖に足を浸してみる。水は雪解け水なのだろうか、夏だと言うのにまだ冷たくて肩まで浸かる気にはなかなかなれない。しばらく裸で下半身を水に濡らして、絶景の中でガタガタ震えた後、意を決して水の中に飛び込む。平泳ぎで50メートルほど泳ぐともう足は水底につかなくなる。風が強くて波が高い。少し泳げば身体が慣れて暖かく感じるかと思ったけれど、依然として身体は冷たくて思うように動かない。身体が疲れて危うく溺れそうになってしまったので、湖面に仰向けに浮いて暫く身体を休める。青い空に白い雲がすーっと流れていくのを眺め、たまに顔にかかる水に苦しむ。ぷかぷかと浮いていると、少し遠くのほうからは子供のわめき声が響いてくる。日の当たるお腹と顔が暖かい。でも水が冷たすぎて浮いてるだけでもつかれてしまう。そろそろ体力の限界に近づいてきたので岸に戻って服を着替える。隣の家族の犬が元気にこちらにむかって走ってきたとおもったら、体を震わせて水しぶきを上げたので服がびしょぬれになってしまった。可愛かったので全て許すけれど、なんだかんだみんな疲れてしまったのでこの日はお開き。正午を過ぎでもまだ車は次々と湖に向かってくる。オレゴンの人たちの土曜日はまだ始まったばかり。僕達もまたここに戻ってきて、もっとオレゴンの夏を楽しもうと約束をしてポートランドへと帰った。

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