ALASKA PART7 -THE DREAM OF ALASKA-
ダウンタウン付近まで恐る恐る車を走らせてアラスカ大学付属の美術館へ出向く。建築的にも素晴らしい造形を施された、言ってしまえばフェアバンクスらしくない美術館だ。フェアバンクス自体、オーロラ以外にはほとんど見どころのない街であるだけに、おそらくフェアバンクスに来た日本人の大半がこの美術館を訪れる。僕もその例にもれずやってきたわけだ。
エントランスに入ると、吹き抜けになっている天井によって広々とした印象を抱く。とても大きな窓から日光が入り込んできて館内はとても明るい。ふと脇に眼をやると、見覚えのある写真が壁に飾られている。それは間違いなく星野道夫さんの写真だった。ただ、一枚だけ見なれない写真が含まれていた。星野道夫さんの妻である星野直子さんから寄贈された、星野道夫さん本人の写っているポートレイト写真だった。深い森の中を笑顔で歩く星野さんが写っていた。表情、格好、環境、どれをとってもこれ以上ないほどに星野さん本人を体現しているように感じられる。それと同時に、自分と星野さんの間にある圧倒的な覚悟の差というのも実感することになった。確かに彼の足跡のほんの一部を今こうして追ってきているわけだけれど、ここで眼にしている写真のような光景を見るために、写真に収めるためにはあとどれほど前に進めばよいのか、どれほど自分の何かを犠牲にしなければいけないのか、そんなことを考えていたように思う。ぼーっと美術館内のカフェでコーヒーを飲みながら、あれこれと考えているうちに時間がすぎた。館内には他にもたくさんの歴史的な展示物や、映像、そしてアラスカのアート作品があったけれども正直なところあまりよく覚えていない。
その後美術館を出て、フェアバンクスで一番有名だという「タートルクラブ」という名前のレストランへ行く。5時開店だというので少し早めに行ったのに駐車場には40台以上の車がぎっしりと並んでいた。いったいどこからやってきたのか、こんなに車が停まっているところなんてフェアバンクスに来てから見たことがなかった。多くの割合で真っ赤な色のダッジやシボレーのトラックが停まっているところがアラスカらしい。中に入って早速注文をする。なかなかの値段に尻込みをするも、一見オススメっぽく見える看板メニューを躊躇なく頼む。10分後にそこに現れたのは幅30センチ、厚さ7センチ程はあろうかという見たこともないサイズの赤く輝く肉の山だった(もちろん付け合せにいろいろと盛られている)。あまりの大きさに、食前に山盛りのサラダやパンを食べてしまったことを後悔するも、覚悟を決めてナイフを入れる。すると見た目に反してするすると切れる。口に入れるととても柔らかく、醤油ベースで味付けされたソースとにんにく、肉の脂が程よくからんで驚くほど美味しい。食前の心配はなんのことはなく、一瞬で平らげてしまった。おまけに食後にコーヒーとケーキも食べ、圧倒的満足感でタートルクラブを後にした。おそらくなのだけれど、アラスカに来てから明らかに食べる量が増えている。寒さですぐお腹が減ってしまうからだろう。普段なら絶対に食べられない料の食事をたやすく食べれてしまうし、それが別に美味しくなくても問題ない。ロッジの部屋についてベッドに横になると、すぐに眠くなってしまいシャワーも浴びずに寝てしまった。