ESSAYS IN IDLENESS

 

 

GOOD HABITS / BAD HABITS

アラスカから帰ってきてからだから、だいたい一ヶ月ぶりくらいにセイゴ君に会った。8月に日本の大学に編入することが決まったので、そのお祝いも兼ねて何故かパワーレンジャーという日本の「ジュウレンジャー」のアメリカバージョンを見に行くことになった。内容は想像に難くないと思うけれど、終始笑いどころが満載のハリウッドリメイクという名の90%改変されたまったくの別物で、とても楽しむことができた。10歳にも満たないような子供立ちに混じり、郊外のモールに入ったシネコンでこういう馬鹿馬鹿しい映画を見るというのもとても貴重な経験のように思える。

 

家に帰って、冷たいご飯を食べる。アメリカの食べ物は正直言って美味しいと思えるものは本当に少ない。僕がこちらに来てから身につけてしまった悪癖の一つが、ご飯を捨てる時にもはや何も感じなくなってきているということだとこの日ふと気づいた。退屈な味付けの料理はお腹がいくら減っていても、すぐに満腹になってしまう。食べきれなくなった料理をゴミ箱に流し入れるなんて、日本にいた頃は絶対にやらなかったことなのに、こちらに来てからは日常の所作の一つとして定着してしまっている。もちろん出されるご飯の量を減らしてほしいという要望は伝えているけれど、それでも食べきれないことは多々ある。なんだかそれに気付いてふと悲しくなってしまった。

逆に、こちらにきて身についたいい習慣だと思うことは店や交通機関で挨拶をすることだと思う。今でもそこまで慣れたものではないけれど、毎日バスの運転手に「おはよう、ありがとう」と言葉を交わして、たまに少しだけ話しをする。そういうことの積み重ねで少しでも気持ちが明るくなるのは素敵なことだと単純に感じる。

文章を書きながら、雨の降る夜の庭先で煙草をふかしていると、今でもこの街の風景を美しいものだと認識できていることにも気づく。うっすらと街灯に照らされた、雨に濡れた木々や葉っぱは静かに輝いている。庭はホストマザーのスーザンによって初夏に向けて手入れがされている最中のようで、昨日までとレイアウトが少しだけ変わっている。いつのまにか季節が変わり、次の季節を楽しみに待っている。そしてそれは僕の長い長い夏休みの終わりが近づいていることも同時に表していた。

hiroshi ujiieday