ESSAYS IN IDLENESS

 

 

SPRING

朝寝坊して慌ててキッチンに駆け上がると、窓から入る陽の光の美しさではっとした。鮮やかな緑がブラインド越しからでもはっきりと分かる。その光を暫くぼーっと眺めながら味のないシリアルを食べた。外に出ると昨日までよりも景色が綺麗に見えて春の訪れを強く感じた。

街を歩きながら写真を撮っていると、「ヒロシ〜〜〜!」と遠くから声が聴こえる。振り返ると、赤信号で止まっている車から厳つい顔をしたおじさんが手を振っていた。突然過ぎて思い出すのに時間がかかったけれど、これは昨日行った写真屋さんのおじさんだった。少しお店に寄ったついでに、写真を見せあったり好きなカメラの話をしたんだった。「いいカメラ大切にしろよ!」そう言葉を残して、いつまでもこちらに向かって手を振ってくれた。これは僕の推測でしかないけれど、きっと向こうも写真を撮っている僕を見つけて嬉しくなったんじゃないかな。まさか昨日の今日で、こんな出会い方をするとは思わなかったけれど心が弾むひとときだった。

hiroshi ujiieday