ESSAYS IN IDLENESS

 

 

RALPH TOWNER @OLD CHURCH

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ECMのギタリスト、ラルフ・タウナー。生で見れる機会が自分にあるとは全く思わなかったけれど、なんの因果かここポートランドで見ることが叶った。長いことECMのアーティストを聴いてきているけれど、キース・ジャレットの来日公演は高すぎたし、他に行きたい公園も特になかった。
Sleeves of DesireというECMのジャケットだけを集めた図録を眺めてはいつか何か見れたら良いなと思うことしかできなかった今回の公演はRALPH TOWNER SOLO W/ ANJA LECHNER & FRANCOIS COUTURIER 全員ECMのアーティストで固められているだけに絶対素晴らしいライブになるだろうと見る前から大きな期待で胸が一杯だった。

「今年はエラ・フィッツジェラルド、ディジー・ガレスピー、そしてセロニアス・モンクの100周年です。アニバーサリーイヤーにふさわしいアーティストをご紹介します。」

MCの人の長い紹介の後、ANJA LECHNER & FRANCOIS COUTURIERが入場してくる。チェロとピアノが美しく響き、繊細に絡み合いながら曲が続いていく。さながら細い糸で編まれた織物のよう。咳をすることも憚られるような、静寂と隣合わせの音楽。それがECMの音楽なんだなと身をもって体感する。

RALPH TOWNERのソロが始まると会場は拍手に包まれる
ギター一本だけ携えて舞台袖から上がってくる白髪の老人がラルフ・タウナーその人だったMCもほとんどなく曲を淡々と引き続けるチューニングの間にぼそぼそと少し喋るだけでギターの演奏に完全に集中しているように見えるジャズのスタンダードナンバーから新曲まで幅広くプレイしていたけれどこれまで聴いてきたどのジャズの曲にも似ていないし複雑だった

ラルフ・タウナーの紹介のMCで「彼の作曲技法を研究したけれど、マジでわからんかった。多分彼は別の惑星から来ていると思う」と言っていたけれど、たぶんそのとおりだと思う。クラシックやジャズ、ワールドミュージックの技法が彼の中で混じり合って、これまで聴いたことのないリフや展開を作り上げている。家で音源を流しているときには全然気づかなかったけれど(ただ心地よさの中に漂っていたから)、実際に聴いてみると印象が違うことに気付いた。たった1時間程度の演奏だけれど、彼が積み重ねた研鑽の一部に触れることができた。そしてかこれまで彼が歩いてきた道のりを自分なりに解釈できたことはとても幸福に満ちた体験だった。

hiroshi ujiiemusic, day