ESSAYS IN IDLENESS

 

 

TONI ERDMANN @CINEMA21

MSRO2698.jpg

もう少しでPDX INTERNATIONAL FILM FESTIVALが始まる。
ということは、通常映画館でやっている映画達が見れなくなってしまうということを示している。
なので、現状公開されている傑作映画たちを駆け足で見ていく必要に迫られていた。

その1本目として、Toni ErdmannをCinema21にて鑑賞。
この映画館は僕のようなタイプの映画ファンにはうってつけのラインナップを常に用意してくれている。
それにこの映画館のネオンサインが大好きだし、受付をやってくれる人たちがとても親切だ。

「トニエルドマンを1枚!」
「もちろん、あれ?この間も来てくれてたよね、ありがとう!」
「覚えてくれていてありがとう」
「面白い映画だから楽しんでね」

こんな会話が当たり前に成立することに、こちらにきて二ヶ月たった今でも感動をしてしまう。
そういえば、ポートランドに来てから何回映画館にいっただろうか?
既に20回は下らないと思うのだけれど、そろそろ行きつけやお気に入りの映画館が自分の中でも出てきた感じ嬉しくもある。中にはいると、僕以外に客席には数人しかいなくて、広々とした映画館を独り占めにしているような感覚だ。いつも通りふかふかの座席が気持ちいい。

トニ・エルドマンは今年のカイエ・デュ・シネマを始め、あらゆる批評誌から絶賛されているらしい(後から調べて知った)。バリバリのビジネスマンのザンドラ・ヒュラー演じる主人公と、その父親のヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)の物語。事あるごとに娘の仕事場にちょっかいを出しに来る父親と、その父親を煙たがりながらも真摯に対応する真面目な娘。(顔からして真面目そのもの)
普通の人なら発狂してしまうくらい厄介な父親だけれど、絶妙な愛嬌があり憎めない。
最後には娘もだいぶおかしくなってしまい、とんでもないシーンが出てくる、ここは是非映画を見てみてほしい。度肝を抜くくらい突拍子もなく、そして信じられないくらい美しい。ギリギリのせめぎあいを続ける、まるで綱渡りのようなこの親子の愛の形に魅了されずにはいられない。ストーリーも映像も、一見平坦なんだけれどもどこか普通じゃない。退屈な話にも見えるのに先が予想できないという不思議な映画だった。

hiroshi ujiiemovie, day