ESSAYS IN IDLENESS

 

 

LEMON TWIGS @DOUG FIR

この日のライブは間違いなくポートランドでのこれまでのベストアクトになる。
20歳にもならないこの男の子達が、こんなに素晴らしい音楽を作り上げることができることが、だいぶ信じられない。
そして申し訳ないことに、前座のSavoy Motelの印象は綺麗さっぱり頭の中から抜けてしまっている。

2016年はこのバンドがどのメディアにも取り上げられていたせいで、聞かずにいるということができなかった。
音源で聞いた印象だと、正直なところ深入りできるくらいの印象は抱かなかった。むしろSporifyで彼らの作ったプレイリストを聞いている方が好きだった。
KEXPのインタビューでもあるように、彼らの音楽のルーツはアメリカというよりイギリスの音楽がベースになっている。ビートルズやビーチボーイズといったバンドの影響が大きい、それはプレイリストを見ていても、ライブパフォーマンスを見ていても明らかだ。
(例えば、ファッション。そしてギターの引き方がピート・タウンゼントそっくりだったりする)

というわけで、「Do Hollywood」はそこまで聴き込まずにライブに向かってしまったのだけれど、結果的には心底後悔している。ライブ会場に着くと人はまばらで、BGMはHivesやFrantz Ferdinandといった2004-5年代を感じさせる曲が流れていた。
このBGMの選定の時点で「おいおいマジか?」といった具合に不安になる。最高に好きだった曲なんだけれど今じゃない。

前座のSavoy Motelのライブは予想以上に酷かった。
ミスや音響バランスがひどく、音源とかけ離れた演奏で魔法が解けてしまったように見えた。むしろ聞かないほうが幸せで居られたかもしれない。
※というより、アメリカのライブハウスにおける前座とメインのバンドのPA格差はひどいものがある。

彼らのライブが終わると、会場が急激に混みだす。
せっかくなので最前列のすこし右側に陣取ると、興奮気味におばさんが話しかけてきた。
どうやら彼らのライブを見るために、わざわざフロリダから来ているらしい。

「彼らはこんな小さな場所でやるようなアーティストじゃないわよ!」
と少し息巻きながら、興奮と期待に目を輝かせている。
「彼らの衣装のなんてキュートなこと、そして信じられないくらい若さ。本当に素敵だわ」
「確かにそうですね、衣装が昔のイギリスのバンドみたいでクールですよね」

隣のおじさんは、返しのスピーカーの隙間に置かれたセットリストを覗き込んでいる。
「今夜はとんでもないライブになりそうだな、、そう思うだろ?」
「ハハ、確かにそうかもしれないですね」

会場を前列から見渡すと、若い人よりもいい年のおじさんやおばさんが大勢いることに気づく。
※実際に最前にいる人達はだいたい僕らよりもだいぶ年齢が上に見えた

こうして僕が聞いて楽しんでいるような音楽を、当たり前のように40-50歳になっても聞いている、そしてライブにも来ているなんて。音楽を取り巻く環境の違いに感激するのと同時に、若い彼らの作る音楽が世代を超えて人に届いているという事実。それに驚かずにはいられなかった。

ライブが始まると、圧倒的なパフォーマンスで一瞬で引き込まれる。
クイーンやビーチボーイズのような美しいコーラスワークギターの華麗なソロやバンドに一見似つかわしくない激しいドラムソングライティングの点から言えば昔から使い古されたフレーズを多用しているのになぜか新しさを感じてしまうI Wanna Prove To YouなんてエルビスだしThese Wordsのイントロなんてベースの教則本みたいなフレーズ(それくらい一般的)
でも曲の構成や演奏の仕方で圧倒的にオリジナリティがあるし、さらに言えば音源とライブで全くの別物に聞こえてくる。それは、僕がこれまで好きこのんで聴いてきたイギリスの音楽全てを合わせて、それでいてなおかつ一貫性があり、この上なくハッピーな音楽にしているのがアメリカの青年だという事実だろう。

ところどころ狂気じみた演奏でこちらを不安にさせてくるほど強烈なライブで、あっという間に2時間が終わり、誰かが後ろからプレイリストをかっさらっていったところで会場が明るくなった。

隣のおばあさんが興奮と恍惚が入り交じった表情をしているのを眺めつつ、会場を後にした。
帰り道に、本当にいいライブだったね、と話しながら帰るのは実は初めてかもしれないと気づいた。

hiroshi ujiieday, music