ESSAYS IN IDLENESS

 

 

12/30 SAN FRANCISCO

旅もいよいよ大詰め、最終目的地のサンフランシスコへついた。
郊外のモーテルに泊まり、近くにあるジャックインザボックスで手記を書いている。
こんな生活、一度はしてみたかったのでは?こうしている間にも書きたいことがたくさん浮かんでくる。

夜行バスでサンタバーバラからサンフランシスコへ。およそ9時間の道のり。満車で寝心地も悪く心底うんざりして目が覚める。朝5時すぎにサンフランシスコのユニオンステーションに放り出され、外のあまりの寒さに身体が固まる。カリフォルニアってもっと暖かいんじゃなかったっけ?と思いながら急いでモーテルへ向かった。
朝六時にモーテルへ着き、遠慮無くフロントデスクを叩き起こす。迷惑そうな顔をされたけど、荷物だけは預かってもらう。

サンフランシスコは近代的な町並みと、昔ながらの町並みが同じ場所に存在する不思議な街だった。そしてめちゃくちゃ坂が多い。観光客の群がる路面電車は無視して、地図も見ずにひたすら坂を登っていく。いつの間にか中華街にたどり着いていた。サンフランシスコの中華街はアメリカで一番大きいらしい。
道の途中でいくつも見かけた色とりどりの建物や家、これまで見てきたメキシコ風の家ではなく、NHKでよく見た「フルハウス」に出てくるような立派な家。坂を登りきって、街を上から見下ろすと様々な色の家と大きなビル、そして海や港が一望できた。
※そういえば、フルハウスのオープニングに出てくる橋はゴールデンゲートブリッジだし、彼が司会をやってる番組は「おはようサンフランシスコ」だったっけ

そのまま、サンフランシスコに来た大きな目的の一つであるシティライツブックセラーズを目指す。
少し早く来すぎたので、周りをウロウロして時間を潰す。中華街付近のいかがわしい店の看板や寂れた中華レストランの看板がかっこいい。10時のオープンきっかりに書店に入る。BGMはSun Raを髣髴とさせるような複雑怪奇なフリージャズ。ビート文学の歴史において非常な重要な役割を担うこの書店についにこれたな、という気持ちで胸が高まる。店の壁には無数の詩人や歌手のポスター、気の利いたメッセージが飾られている。
※例えば「気をつけて!詩はあなたの人生を変えてしまいます!」とか

階段を上がって二階にいくと、そこは詩専門の部屋だった。
決して広くはない部屋だったけれど、そこに古い有名な詩人から新しい詩人の著作まで綺麗に陳列がされていた。
特に素晴らしいと思ったのは、この部屋に差し込む光と、その光が部屋の中に静かに溜まっている様子だった。
縦長の窓から差し込む光は、窓辺にある机や椅子(もちろんそこに腰掛けて読書ができる)を照らしている。そこから反射した光が、棚に置かれた本や壁にかけられた写真を照らし、詩的な空間を作り上げている。差し込む光が映し出す空気中の埃や、家具の痛み具合がまるで映画のようでもあり、これまで自分が見てきた素晴らしい部屋の雰囲気の延長にあるような気がした。部屋には僕の他に数名、静かに詩を読んでいる人たちがまるで風景の一部であるかのように溶け込んでいた。

僕は部屋にかけられた写真や言葉を見渡す。その後スタッフおすすめの著作をいくつか手に取り、翻訳アプリを片手に必死に読んだ。このときほど、英語を英語のまま解釈できたら良いのにと思ったことはなかった。結局何一つ読みきれなかったし満足に解釈できなかったけれど、いつかまたこの場所に戻ってきたいと思った。アメリカの書店の個性や世界観は日本の書店には存在しない何かがある。それは一朝一夕に作り上げられるものではなく、歴史や、そこで誰が何をしてきたのかといった重みが感じられた。単に個性と言ってしまえば話は早いけれど、もっと深く、本質的な何か。まだ僕はそれが何なのかわかっていない。

その後、SFMoMaへ向かう。ニューヨークのMoMAを抜いて作品の所蔵数では全米一位になったらしい。
結論から述べると、全てのフロアを回るのに6時間を要した。もしサンフランシスコに生まれて、いつでもこの美術館にこれる状況があったとしたら絶対に人生が変わっているだろう。フロアは全部で7フロア、全てのフロアに一流と呼ばれる作家のマスターピース級の作品が並んでいる。ベッヒャー、リヒター、ポルケ、ジャッド、カール・アンドレ、セラ、バーゼリッツ、キーファー、サム・フランシス、ジョン・ミッチェル、ウォーホル、ホッパー^、、、他にも数え切れないくらいのアーティストの作品がこれでもかと並ぶ。

個人的には、リヒターのTwo Candle(これはSonic Youthの1stにして僕が一番好きなアルバム、Daydream Nationのジャケットに使われている)や、日本ではまず見れないバーゼリッツやポルケの作品が見れたのが嬉しかった。特別企画展はブルース・コナー。デニス・ホッパーとの共作で知られる彼の作品はアシッドでドラッギーでクレイジーで、あまりにも格好が良すぎた。紛れもない天才性とセンス、発想、そして卓越した技術。どれをとっても非の打ち所がなく完璧に打ちのめされた気分だった。そして映像作品は気持ちよすぎてたまに寝てしまった。
更に展示は続いていく。この時の体験を例えるとしたら、和洋中の最高級フルコースをそれぞれ2週した後に、特大ジャンクフードを食べ、更にスイーツビュッフェに連れて行かれるような感覚。お口直しに抽象絵画でも見ていきますか?みたいな。信じられますか?

頭が完璧に疲れて目も痛い。気付いたら何も食べていなかったので何か食べなきゃと思い、そのままバスに乗ってミッション地区へと向かう。サンフランシスコのミッションは一般的に治安が悪いと言われている、そして実際かなり悪い。ただ、様々な国籍や年代の熱気が渦巻く魅力的な場所だった。


壁や、トラックの外装全体に描かれたグラフィティや、年代を感じさせるネオンサインがとてもかっこいい。
明らかに不審な動きをするおじさん達のわきをすり抜け、いくつかの店で買い食いをしたりしてみたけれど、だいたい何を食べても美味しいし若い人で賑わっている。そしてスペイン語やスラングが飛び交う、ゴミだらけの汚い店の中に一人でとどまって料理のサーブを待つ瞬間は、スリルを感じられてたまらない。ドラッグショップや質屋、露天商などがあふれる異国の街に一人でいると、まるで深夜特急の1ページのようで、それだけで嬉しかった。

ようやく長い一日を終えて、モーテルに戻ってくる。ジャックインザボックスで3ドルもあれば食べれる安っぽいチュロスとコーヒーが最高に美味しかった。

hiroshi ujiieday, journey, art