12/23 LOS ANGELS
アムトラックの中で目が覚める。身体がガチガチに固まっていて全く寝た気がしない。
眠りが極度に浅かったせいだろうか、10回くらい別な夢を見た気がする。
前の方を見るとTシャツで寝ている人がいる。信じられない、どういう身体機能をしているのだろう。
やり場のない怒りと疲れで頭が痛くなる。
車窓からの景色を写真に撮りたかったけれど、そんなことよりもまず眠りたかった。
LAに着くまでのあと少しの間、また眠りについた。
LAに到着すると、あいにくの雨。LAなのに雨かよ!という思いを抱えたままバスに乗る。雨ということもあって、空も街も全体がくすんで見える。バスの車窓から眺めるLAのダウンタウンは鬱屈としていて、汚れたボロボロのテントが道沿いにたくさん立ち並ぶのが見えた。映画に出てくるようなLAの街をイメージしていたけど、それはほんの一部だということに気がついた。バスに怪しげな人が乗ってくると、朝だと言うのにマリファナの匂いがした。
ホテルへいくためにバスを降りる。そこはダウンタウンの真ん中で、ホームレスや浮浪者、売人と思しき人達がたくさんうろついていた。道路沿いの店の窓には頑丈な鉄格子が貼られ、道にはたくさんのゴミが落ちている。
店のシャッターを蹴っている人や、街灯に向かってひたすら何かを叩きつけている人のそばを通りホテルへ向かった。
チェックインを終え、さっそく街へ出る。ダウンタウンにあるフランク・ゲーリーによるウォルト・ディズニーホールへ向かう。遠目からでもわかるその異様な形態は、近くにいくほど迫力を増す。
湾曲した鉄板が空に向かって縦横無尽に広がっている。さぞかしこれを作った人たちは大変だっただろうという要らない心配も心の片隅でしつつ、中に入る。残念ながら施設自体はオープン前で、いくつか入れないエリアがあった。もちろんメインホールも見ることはできなかった。内観はおもったよりも狭く感じる。白い壁と無垢材で統一され洗練されている。エントランスから吹き抜け部分を見上げると2階、3階部分から丸い壁が突き出している。
外観の印象と違い、だいぶ優しい印象を受けたのは間違いない。
このホールが世間でどういった評価をされているか全く知らないのだけれど、正直なところ、これほど機能とコンセプトが乖離している建築も珍しいだろう。「どのようにしてアイデアを形にするか」「いかに美しく仕上げるか」という点においてはこの人の能力は爆発的に優れている。ただ、この人の建築よりもロイドやコルビュジェの作品のほうが「好き/嫌い」という観点で言えば好きだろうなと思った。
更に、その近くにある天使のマリア大聖堂という日本語名だとなんとも言えない巨大な教会へ行く。
中は今まで見たことがないくらい広い。まばらに人が座って静かに祈りを捧げている。
信じられないくらい人の並んでいる(どうやら3h待ちらしい)The Broadを横目に通り過ぎMOCA(ロサンゼルス現代美術館)へ。磯崎新建築ということで、建築をみること自体も楽しみだったけれど外観がほとんど見れなかった。さっそく中に入るとポロック、コーネル、ロスコ、ダン・フレイヴィン、ブラッサイなど一流の作品が次々と現れる。これが海外の美術館なのかと思っていると、意外とすぐに見終わってしまった。海外の美術館って死ぬほど広いんじゃなかったっけ?と思いつつ、そのままゲッフェン美術館(MOCA別館)へ向かう。
ゲッフェン美術館では、映像作家のダグ・エイケンの個展が開催されていた。
そういえば、日本で何個か映像見たことあった気がするな、ということを思い出した。
その時の印象から、なんとなくそこまで大きな期待はしていなかったのだけれども、いい意味で期待を大きく裏切られた。倉庫を改装した大きな会場の中に、無数に展示されたインスタレーションはどれも圧巻だった。
まず音質、そして一つ一つの作品の大きさ、見やすさ。どれをとっても今までみた展示の中でもトップレベルだと思う。
もちろん、作品の良さ自体も間違いなく良い、というか大好きなタイプの作品だった。彼の作品ではアメリカの消費社会を利用/風刺するポップアートの影響、例えばエド・ルシェやウォーホルのような印象も感じるし、用いられる被写体がニューカラーのショアやエグルストンの写真のようでもあり、バックグラウンドで流れる音楽や映像の組み合わせがアルヴァ・ノトやフォー・テットのようでもあった。
とある作品でクロエ・セヴィニーが空港の近くのモーテルを舞台に演じる作品があって、興奮が最高潮に達した。
つまりあらゆるものが僕の大好きなものでしか構成されていないということなのだけれども、それを抜きにしても最高で、結局のところ美術館には3時間くらいとどまっていた気がする。
美術館を出た後、そばにあったリトルトーキョーへいってミスターラーメンという名前の廃れた看板の店でラーメンを食べる。このラーメンの味を例えるとするならば、高速道路のサービスエリアのラーメン / チャーハンの味。更に言い換えるなら、スキー場で食べる休憩所のラーメンの味。それはそれでいいのだけれども、今じゃないなという心持ちにさせられる。
胃が虚無感で満たされたところで、ホテルに戻って2日分の睡眠をとることにした。