ESSAYS IN IDLENESS

 

 

12/22 FLAGSTAFF AND THE NIGHTMARE OF AMTRAK

昨日は余程疲れていたらしい、目が覚めたら10時をすでに回っている。
ダイナーの朝ごはんも食べ逃してしまった。

今日は特にすることも決めていなかったので、街に散策に出る。
ダウンタウンに降りる途中、見かけたアンティークショップに立ち寄る。
中には、キャンベルスープの温め器や、ガソリンのベンディングマシーンなど使いみちのないジャンクが大量に置いてある。
そうした何の役にも立たない愛らしい古いたくさんのものたちが、いつか誰かの手に渡るのを静かに待っていた。

店の一角に雑に置いてあったトイピアノを触る。壊れているかと思いきや、音がなってびっくりする。
Clap Your hands Say Yeahの1stに入っているインタルード、Sunshine And Clouds (And Everything Proud)にそっくりな音といえばわかる人にはわかるだろう。
音を出した瞬間にCYHSYの曲が頭の中になり始めてしまったので、The Skin Of My Yellow Country Teethのイントロをひたすら繰り返し弾いて遊んでいた。

アリゾナの歴史博物館的な場所へ行ってみる。
ネイティブインディアンの作った人形や陶器などが綺麗に展示されている。
個人的には博物館の少し汚れた窓枠の大きな窓や、そこから弱い光が差し込む様だったり、美術館の奥の壁にひっそりと飾られていた美術館ができた当時の白黒写真が素敵だと思った。

また、アメリカ開拓時代の資料館が近くにあったので寄ってみた。
資料館の庭の中には、開拓時代の小屋を復元したものや、当時使われていた様々な道具が展示されていた。
小屋に一歩脚を踏み入れると、少しかび臭くて、暗くて、冷たく張りつめた印象がした。
天井は低く、部屋はせまい。部屋の中には暖炉やサンルーム、ロッキングチェア、ミシン、鉄パイプのベッドなどが置いてある。
狭いけれど不思議と落ち着く空間で、ここで生活をしていた人の様子が頭のなかに想像ができた。
お風呂もないし、今の暮らしの水準で言えば足りないところはいくらでもある。
自然光とランプの明かり、そして暖炉から流れる温かい空気とロッキングチェアがあればどれだけ心や身体が癒やされるだろう?

2つの施設を回ると、もうすっかり夜になっていた。
駅で出会ったおじさんに薦められた、伝統的なメキシコ料理が食べられるという店へ向かってみる。
メニューの名前を見てもよくわからなかったので適当に注文すると、タコスのスープ漬けのようなメニューが出てくる。
冷え切った身体にはとてもうれしい一品で、あっという間に食べ終わる。味はもちろんとても美味しい。

お店の主人が親切に話しかけてくれた

「来てくれてありがとうございました。今日は泊まりですか?」
「とても美味しかったです。ありがとうございます。いえ、これからアムトラックでLAに行くんです」
「アムトラック、それはすごい!旅を楽しんで!」
「ありがとうございます!」

身体が十分に温まったその足でアムトラック駅へ向かう。
アムトラックはアメリカ全土に広がる旅行用の列車で、その気になれば乗りながらアメリカを横断できてしまうという代物だ。
アムトラック駅には旅人や家族連れ、行商人などたくさんの人が乗車するのを待っていた。
新年やクリスマスを都会で家族と過ごすなんて素敵だな、と思いつつ、今頃家族や友達に手紙は届いているだろうかと少し不安になる。
どことなくそわそわした雰囲気の中、15分ほど遅れて列車が到着した。

初めて見たアムトラックは、一言で表すとしたら2階建ての巨大な鉄の箱が走っているという感じ。
高さは日本の新幹線の2倍から3倍くらいあって、威圧感が半端じゃない。
アムトラックは車窓から見える景色が売りなのだけれど、深夜の便だったので楽しみにしていたルート66沿いの景色は一切見えなかった。
やることもないので、そのまま眠りについた。

寒い。とてつもなく寒い、あまりの寒さに15分おきに目が冷めてしまう。
どこからともなく入ってくる隙間風と、なぜか効いている冷房のせいだ。
あまりに太ったおじさんが、僕の席の隣にある下の階に向かう階段に挟まってとんでもない声を出している。
出来る限り身体を丸め、目をきつく閉じてできるだけ早く眠りにつこうとした。
そんな中でもアムトラックは走る音もほとんど立てず、揺れず、止まっているのか進んでいるのかもよくわからないくらいのスピードで暗闇の中を進んでいた。
結局のところ、朝起きるまでに30回は目を覚ましただろう。この日のロサンゼルスの旅が思いやられた。

hiroshi ujiieday, journey