INAUGURATION DAY
「ついにこの日が来てしまった」
会う人会う人、みんなこの言葉を口にする。そう、今日はついに大統領就任式が行われる。
ダウンタウンに向かうバスに乗ると、プラカードや旗、メガホンなどを持ったプロテストに参加するであろう人たちがたくさん乗っている。
バスの中では知らない人同士、今日の大統領就任式スピーチや、今後の政策についての談義が終わらない。
そして大体、こんなニュアンスの言葉が聞こえてくる。
「なんてやつが大統領になってしまったんだ」「俺達の未来はどうなる?」
「あんなやつが、、、馬鹿馬鹿しい」「酒でも飲んで狂ったほうがまし」
ダウンタウンに降りると、パイオニア・スクエアで人々がシュプレヒコールを上げている。アメリカ国旗が燃えている。雨の中、沢山の人が集まり必死に声を上げている。噂だと、明日21日はこの規模の何十倍かの人が集まるらしい。その脇を通り抜けつつ、映画館に向かった。
映画を見終わって、日が沈んで暗くなったダウンタウンを歩く。思ったよりも静かで、人もそんなにいない。デモンストレーションもそろそろ終わりらしい。電車は止まっているし、川を渡るための橋も封鎖されている。結局、遠回りをし続けて4マイル以上も歩いて家まで帰らなくてはならなかった。
歩いて帰っている途中、警察官がたくさん乗った自動車や、プラカードを持って帰る人達とすれ違う。たまに変な人に絡まれたり、手に持っていたVoodoo Donuts(並ばずに買えた)をくれと言われたりしたけれど問題は全くなかった。今のところ、どこでも暴動は起きていないし、どの店のガラスも割られていない。
ここに参加している人たちは、今プロテストを行っても何も変えられないのは知っている。個人個人のやり方で、どうにかして現実に対して折り合いを付ける必要があるのだろう。
僕は、このことについて何かを考えようと思っても「どうすることもできないしな」といつもすぐに諦めてしまう。アメリカの政治のことについて何かを書こうとすると、いつもうまくまとまらない。