ESSAYS IN IDLENESS

 

 

SNOW STORM COMING

今年の雪の量は異常だ。ニュースによるとここ8年で一番の雪の量らしい。
そのせいで、昨日今日と学校が休み。せっかくの休みなのに家に出るのも億劫になってしまう。

「どうせ今日もなにもできないだろう」とおもって、昼過ぎまで惰眠を貪る。
今日は気温は低いけれど快晴で、窓から見える景色が美しい。雪のついた木の枝が陽の光でキラキラと静かに輝く。そんな光景を見ながら朝食代わりにシリアルを食べていると、「ちょっと手伝って!」とホストマザーに声をかけられる。よくわからないまま、手袋もせず、ジャケットも着ずに外で雪かきを手伝う羽目に。

使う道具はダンボールの空き箱。空き箱でひたすら雪をすくってぶん投げた。
ダンボールはそのうちふにゃふにゃになって壊れ、あとは小さなゴミ箱をつかって雪をすくった。
裏庭の木を揺すって雪を落として、その雪を思いっきりかぶったりもした。

今日も家に居続けるのはさすがもったいないので、カメラを片手に散歩にでる。アメリカの質素でカラフルな家並みは、真っ白な雪景色に良く映える。ヘニング・シミュートのピアノ曲はこういう雪の景色によく合う。晴れやかな気持ちでいつまでも歩けそうな気がする。

「今日はいい写真が撮れそうね!」
「ありがとう、そうだといいんだけれど」

なんて声をかけられたりもしつつ、雪だらけの歩道を歩いて進む。大きなもみの木に雪がまばらについていたり、白い雪の上にカラフルなソリやスコップがおいてあったりするのは見ていて楽しかった。そのあと、バーンサイドブリッジまで歩いていき、橋の上から白色に染まる街を見渡す。ちょうど日が傾いてきて、美しい景色を見るのにちょうどいい時間帯だった。僕と同じようなことを考えて、橋の上でタバコを吸いながら川を見下ろしている人と何回もすれ違った。

バーンサイドスケートパークは、こんな寒い雪の日でも人がいる。
寒そうにしながらスケーターの人たちはスイスイとトリックを決めていく。
街のいたるところにあるグラフィティや看板に目を奪われて、その度に写真を撮る。
そんなことをしているうちに、もう日が暮れてしまっていた。

気付いてふと顔をあげると、空にはありえないくらい大きくて、丸くて、綺麗な月がこれ以上ないくらいくっきりと見えた。寒くなったのでバスで家まで帰ろうと思ったけれど、月の見える位置をキープしながらそのまま歩いて家まで帰った。たまに脚を止めてタバコを吸い、月を見る。また歩きながら月を見る。
時間が経つとともに、月は高く上がり、小さくなっていった。家の玄関の扉を開ける前にふと後ろを振り返ると、ちょうど正面の家の真上に月が見えた。とりあえず写真を撮ってみたけれど、自分の目で見ているほど綺麗には映らなかった。

hiroshi ujiieday