ESSAYS IN IDLENESS

 

 

SEE EVERYTHING ONCE / TRIP TO SOUTHERN DAY11

DSCF9966.JPG

トラックストップで眼を覚ます。夜の間は高速道路を走る車の音がうるさかったり、駐車場に入ってくる車のライトが眩しくてなかなか寝付くことができなかった。何度も起きて車の外の空気を吸いに出たりしているうちに、いつの間にか夜も遅くなってしまっていた。一服してリンゴをかじる。朝起きると少し寒かった。車を走らせてアリゾナへと向かう。前は飛行機に乗って空の上から見たアリゾナに今度は車で向かっている。しばらく車を走らせるとカリフォルニアとアリゾナの州境へと到着する。インディアンの保護のため、果物や花火などの持ち込みを取り締まるために行われているらしい。州境警備の人に「オレゴンのポートランドから?どこまで?フロリダ?!それじゃあもう行っていいよ!」ということで何の検査もなしに検問をパス。いつだってこの国の人達はいい意味でいい加減だ。旅人に優しい国というのは本当に素晴らしい。ルート66を目指し、コロラドリバーを北上する。いつかみたホースシューベンドやコロラドダムから流れ出る深い深い青色の雄大な流れが、アリゾナの砂漠地帯に流れている。アリゾナはカリフォルニアと違い、砂漠と岩の混じり合った土地で、地面が赤茶色に染まっている。グランドキャニオンの色とでもいえばわかるだろうか。道路も岩山の間を縫うように走っていて、両サイドは赤く染まった赤礫の山。ハバスシティを始めとした川沿い街は、かなり裕福な層のボートリゾートといった感じだ。パーカーの街どこかしたらにジーザスやらゴッドやらの文字が見えた。そしてそのとなりには大きなガンショップ。この日はベテランのお祝いのお祭りをやっていたみたいで街全体が賑やかだった。街の子供達がデコレーションしたであろう可愛らしく飾られたジープにいろいろな人が乗って町民に対して手を振っていた。そしてそれを追いかける街の人達もまた楽しそうだった。それが少し狂信的な感じにみえて怖かったことも強く記憶に残っている。

ルート66に入る。まず最初の街はキングマンというところで、これは以前アリゾナに行った時にツアーのアテンドをしてくれたおばちゃんに薦められた街だ。昔から残るダイナーやスリフトに紛れて真新しい店も交じる、住み良さそうなスモールタウンだ。建物に描かれたペイントや古めかしいサイン。少し路地を入るとアメリカらしい光景が残っているのがわかる。僕以外にも何人もの観光客が足を停め、ホテルやダイナーの写真を撮っていた。ルート66沿いの道はたくさんのバイクのツーリスト達が大きな音をたてて走っていく。前回の旅でもこうして旅をする大人たちの背中を眺めていたっけ。この国にはたくさんの自由な人たちがいて、そういう人たちは自分の年齢も何も気にしていないかのように自由であることを楽しんでいるように見えた。

ルート66は当時のまま残っているところは少なく、一部ハイウェイになってしまっているところもあれば、ハイウェイの脇の側道として残っている部分もある。キングスマンからセリグマンへと移動する際には道自体が消失してしまっていて、無理して側道に入ったらアップダウンの激しい未舗装の道に入ってしまった。完全なオフロードで走る度に砂煙が舞ってあっという間に車が汚れてしまう。まるでオフロードレースのような道だと思っていたら前方からサンドバギーが何台もこちらに向かって走ってきた。彼らは上裸だったりロン毛だったり、見た目的にはアメリカっぽさの塊のような人たちで最高以外の何物でも無いのだけれど、こちらを見るやいなや嬉しそうな表情を振りまいて近づいてきて両手でロックのサインを作りながら「YEAHHHHHHHH!!!!」と叫びかけてきた。思わずこちらも笑ってしまう。ジープでこんな道に迷い込んだものだから、きっと僕がオフロードを走りに来たのだと勘違いしてしまったのかもしれない。その実ただ不安に苛まれながら酷道を走っていただけなのだけれど、一ついい思い出ができた。やっとの思いでオフロードから出るとだいぶ時間をロスしてしまったことに気がつく。おまけにハイウェイの工事に捕まってしまって大渋滞に巻き込まれた。アメリカの荒野の真ん中を走るルート66から見る夕焼けは綺麗だった。空の色がゆっくりと深い青色に変わっていくのを眺める。それにぴったりのBGMを探すことができるくらいには車の流れはゆったりとしていて、この素晴らしい時間の間に聴きたい曲を聴けるだけ聴いた。

当初日没前までにはたどり着きたかったウィリアムという街についたのは夜の9時過ぎ。もうだいぶ暗いだろうと思っていたけれど、この街の本領はどうやら日没以降らしい。街はとても小さいのだけれどメインの通りにはきらびやかなネオンやサインがずらっとならんでいて眩しいくらいだった。どのレストランやバーも人で賑わっていて活気が溢れている。僕はその辺に車を停めてぷらぷらとその辺を回るのだけれど、僕が入れそうな予算感のレストランがどこにあるのか全くわからなかった。こういう時に一人旅の辛さを感じる。気がついてみればあたりはだいぶ寒くなってきている。知らず知らずのうちに山の上のほうまで登ってきてしまっていたようで、Tシャツ一枚ではまったくいられない。フリースにダウンを着込んでちょうど良いくらいの温度だった。身体を温めてから、もう一度街の中を歩き回って、モーテルのサインを眺めたり、道行く人の後ろ姿を追ったりしながら写真を撮っていた。こうした些細な営みはやっぱり僕にとっては大事で、見返すとなんで撮ったのかわからないし全然良くないものだったりするのだけれど、周りの景色が本当に綺麗だったから、いつまでも撮っていられるような気がした。

hiroshi ujiietravel