HUNTER GATHERER @LIVING ROOM THEATER
日本語でいうところの「狩猟採集社会」と題したこの映画は、とても素晴らしい映画だった。
刑務所から3年の月日を経て帰ってきた40過ぎの大人が、かつての恋人にも忘れられ、金無し、友達なし、希望も未来も無しという状態から、話は始まっていく。
物語自体はこの映画の背景にある重苦しい主題と相反し、軽快でユーモラスに描かれている。
※例えば自分の家に戻ってきたときに庭を掘って自分の宝物を掘り返すのだけれど、そこに女性用の下着が入っていたりだとか。
初めてできた友人のジェレミーと一緒に、廃品になった冷蔵庫を集め新しいビジネスを始める。
ビジネスを始めるにあたって、自分の名前しかアルファベットで書けないことがわかり小学校の居残り学習に通いはじめる。人生が少しずつ好転していくと思いきや、かつての恋人は別の男性と結婚していて、主人公のことをまるで相手にしない。母親や支えになってくれた人たちとの関係も少しずつ悪化していってしまう。
この映画はこうした貧しい人たちの生活を「狩猟採集社会」に見立てているのだろう。
石器時代のようなプリミティブな世界であり、文明が発達する前の世界。現代における貧しさを時代の名前を使って表している。
この映画に救いがあるとすれば主演のAndre Royoの素晴らしい演技にほかならない。
見終わった後に重たい石が胃袋の中にあるような感覚を覚えたけれど、彼の演技によって幸せな気持ちになれた。